2009年 9月 27日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉233 八重嶋勲 体重19貫300匁とは人並み以上、喜ばしい

 ■306巻紙 明治42年4月29日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
               日松館内
発 岩手縣紫波郡彦部村大巻
葉書到着セリ、躰重十九貫三百目トハ並人以上ニ相成実ニ喜は敷候、
扨テ授業料ハ本年一月以降三回請求貳回迄送金セシ筈ナリ、行違ニ無之哉、尚ホ又四十円以上ノ請求ニハ驚キ容易ニハ金束(策)モ六ツケ敷カルベシ、
村長改撰(選)期モ間近ニ相成、再選派ハ、彦部佐藤善次郎、佐藤市平、橋本松蔵、作山吉太郎、作山康太郎等ナリ、一方阿部定吉派ハ近谷菊治、佐藤倉治、小野浅吉等ニシテ其外佐藤和蔵(大峯)ハ多分当方、野上ノ善次郎ト行調同ナルモノノ如シ、佐藤治郎(金矢)ハ目今、小清水交渉中ナリ、議員十二人ノ内身分已確定ノモノ六人、阿部定吉方四人、大峯ト金矢ノ為メ勝敗付クコトナラン、七人トナレハ安心ナリ、金矢ハ此度ハ富哉ノ為メ手前ノ申込ミ、即チ小清水ノ申込ニ苦ミ居ル様子ナリ、然シ是迄Hト提携セシ行掛、或イハ六ツケ敷哉モ難計候得共、金矢ニシテ身分(当方)ニ何ノ恨ミアルコトナシ、Hノ束(策)ニ乗セラレ、是迄理由ナクシテ反対ニアルモノニ候、如何成行クカ、目下作戦ノ為メ旁々無益ニ三十円以上ヲ要スル次第、実ニ困リ候、今回当選シテ彦部村ニ継續村長十ヶ年トナレバ退隠料貳百円受クル故中止スルモ気ノ毒之次第ニ候、
手紙ニ学校の状況ヤ、位置又ハ富哉ハ何学校ニ入学セシヤ、詳細之事柄申述フル暇無之哉、可相成報導ヲ得度候、
郡視学ニ面會セスカ、出来得ル限リ面會ヲ求メ、当地状況ヲ聞キ大学ニモ安(案)内シテ、参観セシムル方可然候、
正養寺教岳ニ宛テ教全死亡ノ悔状モ差出シベク候、
当地ノ気候ハ粟播略等始マリ、梅開花桜二、三日中ナルベシ、稲種子播済、先達中ノ洪水ニテ平井橋桟橋落(平井橋四間)目下修繕中、他郡ニモ破損数ヶ所有之由ナリ、右用事旁々、早々
    四月廿九日     野 村
     長一殿
 
  【解説】「葉書が到着した。体重19貫300匁(72・4`)とは人並み以上になり実に喜ばしい。

  さて、授業料は本年1月以降、3回請求があり2回まで送金したはずである。行き違いではないのか。なおまた、40円以上の請求には驚き、容易には金策が難しい。

  村長改選期も間近になり、自分の再選派は、彦部佐藤善次郎、佐藤市平、橋本松蔵、作山吉太郎、作山康太郎などである。一方阿部定吉派は近谷菊治、佐藤倉治、小野浅吉らで、その外佐藤和蔵(大峯)は多分当方。屋号野上の佐藤善次郎と歩調同じようである。

  佐藤治郎(金矢)は今、屋号小清水が交渉中である。議員十二人の内当方にすでに確定の者6人、阿部定吉の方は4人。屋号大峯佐藤和蔵、屋号金矢佐藤治郎のために勝敗がつくということはないだろう。7人となれば安心である。

  屋号金矢は、この度は佐藤富哉のため自分の方への申込み、即ち屋号小清水の申し込みに苦しんでいる様子である。しかしこれまでHと提携してきた行きがかりがあり、あるいは難しいかもしれないが、屋号金矢は、当方に何の恨みもあることではない。Hの策に乗せられ、これまで理由もなく反対してきた者である。

  いかがなっていくものか、目下作戦のため、無益に30円以上を遣った次第で、実に困っている。今回当選して彦部村に継続村長10か年となれば退隠料200円受けることができるので、今やめるのも気の毒である。

  手紙に学校の状況や位置、または佐藤富哉は何学校に入学したのか、詳細に知らせる暇はないのか。なるべく知らせてほしい。

  郡視学に面会しないのか。出来るかぎり面会を求め、当地の状況を聞き、大学をも案内して、参観させるようにした方がよい。

  正養寺石ケ森教岳に宛て、石ケ森教全死亡の悔状も出すようにせよ。

  当地の気候は粟播きがほぼ始まり、梅が開花し、桜は2、3日中であろう。稲の種子播きが済み、先達ての洪水で平井橋の桟橋が落ち(平井橋四間)、目下修繕中、他郡にも破損が数か所あるようである。右用事方々、早々」という内容。

  村長選挙直前の緊迫感が漂う手紙。もし落選すれば、家の経済がたちまち窮乏し、学費の送金がますます難しくなるからである。

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