2009年 11月 1日 (日)

       

■ 〈早池峰の12カ月〉17 丸山暁 自然の恵みは分け合って

     
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  しばらく前に、朝の日課となっていたくり拾いは終わったが、今年最後ともう一度地面に目をやると、幾つものくりが食い散らかされていた。中には3、4個の歯形がくっきり残っているものもある。これはリスの仕業に違いない。夜中にやってきて、わが家のくりを横取りしていったのだ。一瞬「このやろう、僕の獲物を」と頭をよぎったが、すぐに「自然の恵、皆で分け合おうではないか」という気持ちになった。これは本音です。

  わが家のくりの木は、ここに越してくる2、3年前に、地主が6本植えておいたものである。その時は僕の背丈ぐらいだったが、今では根元が4、50a、高さは優に10bは超えただろう。大きくなり過ぎたので3本切ったが、わが家で食べるには十二分の収穫がある。

  そのくりは、くりご飯になったり、くり入りリゾット、マロンケーキ、マロンパン、マロンマフィン、ポタージュスープ、くり絞り、鶏肉との炒め物、と食卓をにぎわしてくれる。

  自然の恵みは皆で分け合うもの、家の周りにはリスやタヌキ、カモシカなどがやってきてわが家の実りを食べていく。何を狙ってか、くりの幹には大きな熊の爪あとが残っていたこともある。

  その代わりと言うには彼らの代償は大きすぎるが、人間はタヌキや熊を鍋で食う。熊鍋は僕は大好きだが、タヌキ汁は一度食べればたくさんだ。ああ無情、これも自然の摂理、命の循環。カモシカはうまいそうだが天然記念物、食ってみたいがお縄になる。

  自然の恵みは動物とも分け合ってと言いながら、世界には餓えに苦しむ10億の民がある。今、毎日2万5千人の飢餓民が餓死し病で死んでいく。しかも6秒に1人の子供が死んでいる。

  これが、高度に文明を進化させ、食文化を発展させた人類の姿である。世界を平等にすると言っていたグローバリズム市場経済が進めば進むほど、世界の餓えは拡大して、博愛が心情の先進国は飽食三昧、メタボ地獄。先進国にも貧困問題はあるが次元が違う。

  TVが映し出す「崖っぷち犬」や「矢ガモ」の警察、行政総出の救出劇に視聴者は一喜一憂涙して、北極熊やパンダを救うには世界が動く。この人間性は美しい。しかし、10億の飢餓民救済の動きは極度に鈍い。少々の善意や子供たちのお小遣いではおぼつかない。

  多くの飢餓民は人間が作った枠組み、国境というに壁に閉じ込められ、食べ物を手に入れることも、救出の手を差し伸べることも容易ではない。核廃絶と共に、飢餓も解決しなければ、世界の安定などありえない。世界の軍事費の1%を飢餓救済に使えば事足りるのだが、軍拡競争は拡大の一途。日本とてその枠の外ではない。自然を生きるリスたちに国境はなく、自由にわが家に出入りして、お腹を満たしていく。この人間社会の不条理。

  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

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