2009年 11月 5日 (木)

       

■ 〈風のささやき〉11 重石晃子 絵は心の窓

     
   
     
  先日、盛岡ユネスコが主催する「私の町の宝物」と題して描いた、子供たちの絵を見せて頂いた。作品の審査を依頼されたためである。応募作品450点のうち約3分の1だけを選び出し、その中から賞を決める。なかなか大変な作業であった。

  審査は私だけではなく、小学校や中学の美術担当の先生方もご一緒だし、ユネスコの会員の方々が、細々と動いてくださってスムーズに運んだ。子供の絵は、かなり気を付けて扱わねばと私は思っている。この審査で、絵が好きになったり嫌いになったりする心配がある。子供たちの純心な心を傷つけてはならない、一枚一枚の作品から立ち上る子供の真剣なまなざしと、心の動きを感じながら、作品を選んだ。

  その中に、4年生で水彩絵の具を分厚く塗った1枚の作品があった。多分岩手公園の「亀が池」を描いたものらしい。うっそうと茂る樹木は緑の変化も美しく、手前に高く水を吹く石の噴水がある。

  この子は、動く水を描きたかったのかも知れない。でも絵の具は思うようには載ってはくれない。これでもか、これでもだめかと絵の具を塗り重ねたに違いない。絵との真剣な取り組みである。最後に池と樹林との間に緑がきれいに見えるように、オレンジ色の柵の線を引いて終わりにしている。

  この最後のオレンジ色の線こそは、この子の色感の良さと感性のすべてを表現している。素朴なこの作品を、私はとても美しいと思った。子供でなければ描けない世界がそこにはある。

  描いた本人は、自分が美しい絵を描いたとは、おそらく思ってはいないだろう。絵は本能なのだ。赤ん坊がいたずらに線を引きながら育ち、心を発達させて行くように、絵は感性を育て、感性は創造力を、そして人間をおおらかにしてくれる。

  この「亀が池」の作品は決して器用に出来たものではない。しかし真剣に奮闘して出来たこの絵の深さを知り、ユネスコ展に送った担任の先生の慧眼にも感心した。

  授賞式では、どんな子に会えるだろう、私はとても楽しみにしている。
(画家、盛岡市在住)


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