2009年 11月 7日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉80 望月善次 あんまりに、秋をしふる故

 あんまりに、秋をしふる故 空も草も
  木も無き国に移り住みなん
 
  〔現代語訳〕余りにも、秋を強制するものですから、空も草も木も無い国に、移り住もうと思うほどです。

  〔評釈〕「阿提目多伽抄」〔『アザリア』三号〕七首の冒頭作品。歌稿『阿提目多伽』は、一九一七(大正六)年の九月〜十月のもので、「阿提目多伽(あだいもくたか)」は、仏典による。梵語atimuktakaの音写で、漢字表記には「阿提目多迦・阿地木多迦」もある。意味は「ツルクサ」の意で、これから香油などを採るという〔『総合佛教大辞典』(法蔵館、二〇〇五)他〕。第二句は、「秋+をし(強意)+経る」等の可能性をめぐって、少し迷うところもあったが「秋+強ふる」だと読んだ。全体の意味としては、表面的には、「秋への抗議」の様に受け取れるがそうではない。親しい間柄などで良く見られる、「軽い冗談を言い合って親愛の情を表わす」系譜に連なるものだと解釈した。初句を「あんまりに」と砕けた口語調で入っているのもそうした作品全体のトーンと一致している。ただし、「空も草も木も無き国に移り住みなん」が平凡と言えば平凡で、ここからのもう一歩が嘉内作品の課題。
(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします