2009年 11月 17日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉84 望月善次 語らへどそはよそひとの

 語らへど そはよそひとの ごとくな
  りき 今宵はじめて 君と手握る
 
  〔現代語訳〕(あなたと)話はしたのですが、(その様子は、親しい者のそれではなく)まるで他人のようでした。私は初めてあなたの手を握ったのです。

  〔評釈〕「阿提目多伽抄」〔『アザリア』三号〕七首中の五首目。内容的には、好意を持つ相手とようやく話ができたのだが、それは、親しい者同士としてのものではなく、まるで他人同士のようであったという前半と、私は、今宵初めて好ましく思っている相手の手を握ったのだという後半とから成る作品。こうした作品が読者に受け入れられるためには、前半で言えば、相手が「よそひとのごとくなりき」としている原因が分かることが必要となろう。相手は、話者に対して好意を持っているのか、いないのか。後半の内容から考えると、まるで好意を持っていないわけではないだろう。そうだとすると、「よそひとの ごとくなりき」の「場」がある程度は明らかにされなければなるまい。また、後半で言えば、「そはよそひとのごとくなりき」であった相手が、とにかく「手握る」ことを許した経緯の叙述も必要となろう。ただし、作品の問題点には、「大正時代の男女」という事情も無視できまい。
(盛岡大学学長)


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