2009年 11月 24日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉87 望月善次 白熱のこゝの黙唱の

 白熱の こゝの黙唱(シゞマ)のよろ
  こびに 酔ひも痴れたる男なるかな
 
  〔現代語訳〕最高潮にも達したこの静寂が嬉しくて、うっとりとなっている男なのです。

  〔評釈〕「秋の気圏」〔『アザリア』三号〕二首の最初の作品。「黙唱(シゞマ)」の「シゞマ」のルビは原著のもの。「秋の気圏」は、『アザリア』第三号の第九葉の末尾に二首だけ組み込まれたもの。「埋め草」だとも受け取られても仕方がないほどの二首でもある。しかしながら、『アザリア』第三号の発行日は、大正十三年十月十七日となっているから、そうした点では、「秋の気圏」は、まさに時宜にかなったテーマではある。一首は、内容的には「この秋の静かさの中に浸り切っている男」を詠もうとしたもの。「白熱」の「白」は、物体が高温になると、熱放射によって放射に短波長のものが増えることによるという(1千度C以上の金属で見られる)〔『マイ・ペディア』〕。ここでは、「頂点に達する」意であるが、「黙唱」との相生については議論もあろう。「男」は、話者自身だとするのが素直な読みだろうが、単独作品だと見れば他の可能性もある。「男」と客観化させたところなども一種の手間。
(盛岡大学学長)


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