2010年 4月 11日 (日)

       

■ 〈早池峰の12カ月〉40 丸山暁 人はお金で釣れるもの?

     
   
     
  毎年、春一番で採る山菜は、アサツキで、この辺りではアサツキをヒロッコという。ヒロッコとよく似た呼び名のヒロコもあるが、姿形は似ているもののそれはノビルで、球根(正式には鱗茎)がまん丸でコリコリするだけ、味も風味も数段落ちる。

  地元の人も、アサツキ、ヒロッコ、ノビル、ヒロコの分類は定かではないようだが、詳しいことは読者の中にもたくさんいらっしゃるであろう、山菜博士にお任せしよう。

  アサツキは本来天然ものだが、わが家では、大きいものだけ採って、小さいものは残したり植えなおし、毎年採れるようにしている。山菜に変わりはないが半天然である。

  そういうわが家の半天然の山菜はアサツキのほか、ワサビ、クレソン、ヤマウド、ウルイ、行者ニンニク、タラノ芽があるが、気のせいか、やっぱり山菜は完全天然物の方がうまいようだ。しかし、天然物を食い尽くしたら元も子もないので、半天然でもいたしかたない。

  ここ数年、産直が繁盛し、自然食ブームと相まって山菜は大人気である。近所の山にも、シーズンには山荒しのごとき山菜採りがやってきて、タラの木を手元で切り倒しシドケを一面根こそぎ掘り起こしていく。集落の山の入り口に「集落関係者以外の進入、山菜キノコ採取禁止」の立て看板があるが役に立たない。

  ちなみに僕は移住者で山持ちではないが、集落から入山許可のお墨付きをもらっている。

  集落に来て2、3年目の春、竜の谷(なぜか集落の人は立ち入らない?)に山菜採りに行った時、山の入り口附近で畑仕事をしていたKバーサンが「山菜採りか、おめが帰って来るまでここにいてやる」と声をかけてくれた。一瞬何のことだろうと思った。

  そのころ、山菜を採りに山に入って熊に襲われ、命落とす人やけが人が多くあった。彼女は、僕の帰りが遅かったら、みんなに知らせてやるからと、僕の身を案じてくれたのだ。移住後、集落の一員として認めてもらったと思えたひとこまである。

  「田舎暮らし」は相変わらずブームのようで、岩手県は、岩手定住「おためし」をというので、1週間以上体験滞在した家族に5万円支給するという。田舎暮らしの分岐点(定住するか撤退するか)は5年と言われ、移住の真価が問われるのは10年経ってからだろう。

  定住促進もけっこうだが、お金や田舎の癒しを売り物に誘うのはいかがなものか。わが家はこの4月で移住18年目になる。県から100万円ぐらいご褒美をいただいてもいいのだが(1週間で5万円なら)、その何倍もの豊かなものを地域や人々から頂いている。
  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

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