2010年 4月 23日 (金)

       

■ 〈命のアート〜るんびにいのアトリエから〉3 「国破在山河」美の造形 小林覚さん

     
   
     
  今回ご紹介するのは、ご覧の作品。独特のリズムを感じさせる踊るような線と、ビビットでポジティブな色彩で、不思議な模様のようなものが描かれています。抽象画のように見えるけど、ただの図形として見るには何かひっかかるような…。この作品のモチーフが何かを知れば、その不思議なひっかかりの理由が解けるかもしれません。答えは、あとのお楽しみ!

  作者の小林覚さんは1989年生まれ。釜石市出身で、現在は花巻市の知的障がい者支援施設ルンビニー苑を入所利用しています。小林さんには自閉症という障がいがあります。自閉症については、映画「レインマン」などでそのイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

  自閉症という障がいによって、小林さんは周囲との意思の疎通や、自分が置かれている状況の理解など、日常生活の中でさまざまな困難に直面することがあります。自閉症の人が味わう困難は、言葉が全く通じない、文化もまったく異なる外国にただ一人でいる状況にたとえられることがあります。

  そのような困難の一方、造形表現において、小林さんはきわめて独創的な創造力をあらわします。何ものにおもねることもなく、自分の中に宿る形の喜びだけに忠実に従って、力強く生み出される造形。それは、彼の朗らかで躍動的な人間性のぬくもりを帯びて、見る人の心に幸福を呼び起こします。

  さて、この作品のモチーフ。実は文字なのです。「国破在山河 城春深草木 杜甫」(くにやぶれてさんがあり しろはるにしてそうもくふかし とほ)と書かれています。漢詩「春望」の冒頭の一節です。どこが「国」でどこが「破」なのか、さがしてみてくださいね。

  小林さんはどんな文字でも独自のルールで、楽しく美しい造形に変えてしまいます。描くときは迷いなく、一気に描き上げます。その造形にはさまざまな秘められたルールがあるようなのですが、なぜそういうルールになるのか、知っているのは優しくほほえむ小林さんだけです。

  (板垣崇志=るんびにい美術館アートディレクター)

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