2010年 4月 29日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉307 岩橋淳 ドリトル先生アフリカへ行く

     
   
     
  アメリカの作家・ロフティング(1886〜1947)による「ドリトル先生」シリーズは、動物の言葉を解するお医者さんが、自身の求めると求めないとにかかわらず、世界各地に冒険の旅に出るという設定で、子どもが初めて出会う長編物語として十二分に魅力的なもの。翻訳は、文豪・井伏鱒二によるユーモアと格調を兼ね備えた名訳が、本邦オリジナルとして現在もそのままに伝わっています。

  もっとも親しまれている第1作「ドリトル先生アフリカゆき」の前半部分のダイジェストを、31枚の幻燈画に仕立てたのが、童画家として独自の境地を築いた茂田井武。これに小学生のころからこの物語に親しんだ翻訳家・南條氏が文をあてたのが、本作です。

  大長編である原作の趣を損なうことなく、敬愛する井伏版をリスペクトしつつ物語を復元するスタイルでの進行は、原作を知らない読者でも十分に楽しめる展開。なにより昭和レトロの代名詞とも言うべき茂田井調で描かれたドリトル先生は、原作がそもそも作者ロフティング自身による挿絵つきであるというハンディをものともせず、懐かしさと安定感を伴って眼前に浮かび上がるのです。

  幻燈って、ちょっと前までは雑誌の付録にもなっていたりして、ひとつのメディアとしても成り立っていたことまで思い出されます(友だちの家に集まっての上映会は、イベントとしてもちょっとしたものでしたよね)。

  本作をきっかけに、原作への挑戦、いかがでしょうか?

  【今週の絵本】「ドリトル先生アフリカへいく」H・ロフティング/原作、南條竹則/文、茂田井武/絵、集英社/刊、1575円(2008年)。

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