2010年 5月 15日 (土)

       

■ 〈保坂嘉内の短歌〉155 望月善治 初夏の銀座通も

 初夏の銀座通も 宵ふけて 柳の陰に
  夜店(ミセ)はるなり。
 
  〔現代語訳〕初夏の銀座通も宵から時間がたって、柳の陰には夜店が設けられるのです。

  〔評釈〕「東京夕景集」十一首〔「東京雑信」、『アザリア』六号(大正七年六月二十六日)〕中の六首目。初句の「初夏」は、五七五七七の短歌定型の上から、訓(よ)みは「はつなつ」であろう。また、結句の「夜店」の「店」には「ミセ」がついているから、「夜店」の訓みは「よみせ」となる。なお、嘉内ノートによれば第三句の「宵ふけて」は、当初「宵かけて」であった。ところで「宵」は「ユフベ↓ヨヒ↓ヨナカ↓アカツキ↓アシタ」の第二区分〔『岩波古語辞典』〕。「ふける(更ける)」は、「フカシ(深)の語根フカを活用させた語」〔『岩波古語辞典』〕であり、例えば「夜が更ける」のように用いられるので、そうした点からは嘉内自身も「宵ふけて」に違和感もあったのではないか。嘉内のノートが当初「宵かけて」となっていたのもこうした違和感に発するものであろう。いずれにしても、話者には「銀座通」、「その柳」、「夜店」などが、「東京夕景」を典型的に表すものと感じられたのであ
る。
  (盛岡大学学長)


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