2010年 5月 18日 (火)

       

■ 〈保坂嘉内の短歌〉156 望月善治 柳と柳、風にもつれて

 柳と柳 風にもつれて 揺れ合へり 
  銀座の夜とバイオリン引き。(ママ)
 
  〔現代語訳〕柳と柳が風に絡み合って揺れています。銀座の夜にはバイオリン弾きもいるのです。

  〔評釈〕「東京夕景集」十一首〔「東京雑信」、『アザリア』六号(大正七年六月二十六日)〕中の七首目。第三句は、嘉内のノートでは「ゆれあへり」と漢字は開いていた。なお、結句の「バイオリン引き」は、「(琴や琵琶などの爪を手前に引く意から)楽器をかきならす」〔『広辞苑』〕の意であるから現在多く見られる表記からは「バイオリン弾き」となろう。「銀座」は、徳川家康による伏見銀座(一六〇一)に発し、江戸が一六一二年。いわゆる洋風煉瓦館に柳並木の銀座八丁目繁華街は一八七七年以降のもの。「バイオリン引き」は、バイオリンのみを弾いたのか、あるいはいわゆる「バイオリン演歌」のように歌も歌ったのであろうか。いずれにしても、「柳」、「バイオリン引き」、「銀座」と当時の「東京」を象徴する風物を素材とし、それのみを投げ出している。ただし、作品の質の点からすると「柳と柳 風にもつれて 揺れ合へり」の前半と「銀座の夜とバイオリン引き。」との均衡の評価は分かれよう。
(盛岡大学学長)


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