2010年 6月 2日 (水)       

■ 〈過ぎ去りし日〜北上山地に生きた人々〉5 白馬がいた 横澤隆雄

     
   
     
  若いころ、遠野物語の世界に惹(ひ)かれて、よく写真を撮りに遠野に通っていました。実家のある川井村(現宮古市川井)からは、国道340号を走り約1時間の道のりです。

  川井村と遠野市の境にある立丸峠を越えると、そこはもう一木一草が物語的に見えてくる不思議な世界です。今流行のパワースポットとでも呼ぶべきなのでしょうか、一歩遠野郷に足を踏み入れると独特の雰囲気を感じます。

  川のせせらぎにも、風の音にも、物語的なものを感じながら撮影をしていました。かつての馬産地として知られた土地柄だけに、少ないとはいえ馬を飼っているお宅があることも写真撮りにとっては魅力的なものでした。

  いまどき農作業をしている馬などいませんが、馬のいる生活を記録したいと撮影をしていたとき、偶然に白馬に出会いました。馬と娘の恋物語で知られる遠野の「オシラサマ」はあまりにも有名ですが、その遠野物語の世界から抜け出してきたのではないかと思われるほど美しい白馬でした。

  もう一度あの馬に会いたいと思いながら、20年以上もの歳月が流れてしまいました。すでにあの馬は「オシラサマ」同様、天に昇ってしまったことでしょう。

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