2010年 6月 10日 (木)       

■ 〈お父さん絵本です〉312 岩橋淳 田んぼのいのち

     
   
     
  田んぼに水が入り…、こどもが泥だらけになって帰ってくる(どうしてわざわざハマッたりするんでしょう!?)ようになれば、夏、近し。

  昨夏、本稿で『川のいのち』をご紹介した故・立松和平さん。この「いのち」シリーズも、山、木、海、牧場、街、と連ねられてきました。物語はそれぞれがまったく異なる設定なのですが、どれもが自然と向き合って真摯(しんし)に生きる人間の姿が描かれてきました。

  本作は、人生の過半を田んぼで過ごした老夫婦の季節を追ったもの。

  齢七十、長年暮らしてきたその山村からは次々と仲間が去り、子が去り、今や連れあいとたった二人で田んぼをつくる賢治さん。つらい力仕事も、田んぼに水を入れた瞬間の輝きが忘れさせてくれます。今年も、いつも通りの田植えの季節。けれど、連れ合いの春子さんが病に倒れてしまい…。

  主人公・賢治さんとは、宮澤賢治そのひとをイメージして造形されたもの。

  1999年の秋に仕事で花巻を訪れた立松さんが、宮澤賢治記念館で着想を得て、そのまま同館の会議室にこもって筆を進め、誕生したのが本作であるとのこと。「人間の苦しみと、しかし、苦しいだけではないと応えてくれる自然への信頼」が、本作のテーマだそうです。

  実娘である桃子さんと共に、「いのち」を問うライフワークとして取り組んだ作品です。

  【今週の絵本】『田んぼのいのち』立松和平/文、横松桃子/絵、くもん出版/刊、1260円、(2001年)

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