2010年 6月 13日 (日)       

■ 〈早池峰の12カ月〉49 丸山暁 名前を変える小道

     
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  この地に来てすぐ、だだっ広い茶色一色の畑の真ん中に、畑から出た石を敷き詰め一本の小道を作った。この一本の小道から僕と土地との歴史が始まった。

  その小道(パス)はセンターストーンパスと名づけられ、初夏にはカモミールパス、夏から晩秋にかけてはマリーゴールドパスと名前を変え姿を変える。

  この時期のカモミールは、毎年こぼれ種子が晩秋から初冬にかけて発芽し、雪の下で冬を越し、この時期見事に花開く。種から育てたマリーゴールドはカモミールの後に植える。

  畑の中の石を敷き詰めただけの小道でも、センターストーン・カモミール・マリーゴールドパスと名前がつくと物語が生まれ愛着が出てくるものだ。

  この世の中の森羅万象、人間は人間の意識にひっかかったものすべてに名前をつける。

  何だか分からない飛行物体にわざわざ未確認飛行物体(UFO unidentified flying object)と名づけ、おかしな話だが、題名のつかない絵にさえ「無題」と名前をつけないと気がすまない。かっこよく見えるので?僕の絵にも「無題」とつけることがある。

  人間は宇宙の遥か彼方100億光年先の目に見えない星にも名前をつけてしまう。そうしないとその星は、宇宙の彼方に紛れ込んでしまう。ジャングルで発見した新種の動物も名前を付けておかないと、どこかにいってしまえばそんな生き物はいないことになってしまう。名前、言葉には、それぞれに対応するものや概念がついてくる。

  まさに名前のないものは、たとえこの世に存在しても人間の社会には存在しないのである。

  本来、「もの(実体であれ概念であれ)」には名前があるから存在するのか存在するから名前があるのかは、ソクラテスのイディア論からの哲学上の奥の深い問題でもある。

  最近ジョニー・デップが出た映画で話題になったルイス・キャロルの『不思議な国のアリス』の姉妹編『鏡の国のアリス』で、ハンプティー・ダンプティーが、アリスに言葉の概念を拡張したり転化して、アリスを混乱させる場面があるが、ハンプティー・ダンプティーは「言葉は、僕がそういう意味に使うことにした意味になる」と言っている。これが混乱の元。

  今政治が危うい。人生いろいろと言ったり、麻生さんは漢字が読めず意味不明、鳩山さんは言葉の意味を消し去り、言葉の信頼を失墜してしまった。菅さんに期待することはまず、政治の言葉に意味を取り戻し(概念の共有)、言葉に責任を持つことである。

  言葉に意味を持たせるということは、口先ではなく心から言葉を発することでもある。

  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

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