2010年 7月 22日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉317 岩橋淳 百年の家

     
   
     
  本稿287でご紹介した『エリカ 奇跡のいのち』で、数奇な運命を描いたインノチェンティ氏。少年のころから働きつつ独学でたどり着いた画風は荘厳な宗教画を思わせ、芸術の都・フィレンツェ出身というプロフィールを知るに及んでなるほど、と納得させるもの。詩人でもあるストーリーテラー・ルイス氏と組んで、重厚な作品を発表しています。

  石造りの、一軒の廃屋。そのモノローグは、西暦1900年、森に分け入ったこどもたちによって眠りから呼び覚まされたことで始まります。350年近く前に建てられ、何世代もの移り変わりを見てきた家にとっては、久々の人間の声。…幾度もの風雪や山火事に耐えてきたとはいえ、荒れ果てた家に、人々は手を加えます。やがて若い夫婦が住み、明かりがともり、森は開かれ、新しい歴史が刻まれることとなります。

  家には、分っています。喜びも悲しみも幾年月、人は集い、出会い、そしていつかは去っていくということを。それを繰り返しながら、時は移ろっていくということを。そして100年という月日は流れ、いくつかの物語が紡がれていく…。

  バートンの名作『ちいさいおうち』を思い起こさせる展開は、そこに暮らす人々のドラマに、よりウエートがかけられています。何度もページを繰り直して味わう絵合わせの楽しさに加え、人が刻む時間と、いや応なく訪れる運命の経過を俯瞰(ふかん)させる、大作です。

 【今週の絵本】『百年の家』R・インノチェンティ/絵、J・P・ルイス/作、長田 弘/訳、講談社/刊、1995円(2009年)。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします