盛岡タイムス Web News 2010年 10月 5日 (火)       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉106 及川彩子 ドルチェの誘惑

     
   
     
  イタリアンジェラートやティラミスなど、日本でも知られるイタリアのお菓子「ドルチェ」は、「甘いもの」という意味で、大の甘党のイタリア人には欠かせません。

  パスティチェリアと呼ばれるケーキ屋さんをのぞくと、季節の果物を添えた色とりどりの菓子が並び、あれもこれも買いたくなります。

  中でも、イタリアっ子の一番人気はクロスタータ。網目状に焼き上げた生地に、チョコレートやジャムを塗った焼き菓子で、家庭のオーブンでも手軽に焼ける、手作りおやつの定番です。先日も、わが家に近所から、おすそ分けが届きました。(写真)

  ナッツやクルミなどを練り込んだ生地から、とろけ出る木苺(きいちご)、スグリ、杏(あんず)、サクランボなどの季節の甘いジャム。この国の子どもたちは、その極上の「マンマの味」で育つ、と言っても過言ではありません。

  伝統的に、ドルチェも、スパゲティなどと同じ様に、粉を水で練るパスタの一種。クッキーのような固焼きや、サクサクしたパイ生地が基本で、パスティッチョと呼ばれる一口サイズは、一個約30円。

  イタリアに来たばかりのころ、日本で食べ慣れたイチゴのショートケーキを探し回りましたが、見つかりませんでした。よく似ているフワフワのスポンジケーキは「スペインのパン」と呼ばれ、味はまさに、日本の「カステラ」。けれども、イタリアではあまり人気がないようです。

  ドルチェの起源は、古代ローマにさかのぼります。粉を水でこねて石焼きにし、はちみつで食べたという記録が残っています。その後、十字軍によって、カカオや香辛料がもたらされ、12世紀には、東方貿易の港ベネチアにパスティチェリアが開店したのです。

  「甘い」のほかに、「優しい」、「懐かしい」など、たくさんの意味を持つイタリア語「ドルチェ」。この素朴な焼き菓子には、遠い昔の歴史と香りが染み込んでいるのです。

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