盛岡タイムス Web News 2010年 11月 2日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉108 及川彩子 日本舞踊の一夜

     
   
     
  近郊の街ヴィチンザで、日本文化の祭典が、この10月、2日間にわたって開かれました。

  人口10万人余のヴィチンザは、ここアジアゴから車で1時間。バロック建築の街並みは、丸ごと世界遺産で、産業の金細工は世界的市場として知られます。

  会場は、農地が広がる郊外の古い貴族の館。天井の高い壁には、18世紀のフレスコ画が描かれている文化財でもあります。その広間に畳が敷かれ、着物の着付け・武道・生け花・記念講演などが一日中行われたのです。

  毎年開催されるこの企画に、地元ファンも多く、私たち家族が会場に駆けつけた時には、すでに満席。今回初めて日本の舞踊も紹介され、立ち見も出るほどの大盛況でした〔写真〕。

  イタリアは、バレエの発祥地。レオナルド・ダ・ビンチが、舞台衣装と装置を担当した記録も残されているほどで、それだけに、イタリア人の舞踊芸術に対する関心も高いのです。

  この日の祭典に、日本から招かれたのが山形県出身の新舞踊家、梶野律子さん。夜の公演で梶野さんが、美空ひばりの「悲しい酒」に合わせ、すり足で登場、しなやかなしぐさと、控えめな表情で「日本の心」を表現すると、会場は静まり返り、すっかり魅せられた様子でした。その傍らで主催者のイタリア人日本愛好家グループ代表のマリオさんも、満足気に見守っていました。

  私たちと数年来の付き合いになるマリオさんは、夕食には自ら刺身を作り、寝る時は布団、宝物は日本製の炊飯器という日本通。職業も、イタリアでは珍しい指圧師です。

  そんなマリオさんが、舞台が終わると、あいさつに立ち「日本人の奥ゆかしさ、礼儀正しさを、舞踊を通して理解できましたね」と興奮気味に客席に問いかけたのでした。

  私たち日本人には、気恥ずかしくなる言葉でしたが、大理石の床から漂う畳のにおいに、自分を取り戻したような気がしました。

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