盛岡タイムス Web News 2010年 11月 4日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉332 岩橋淳 牛をかぶったカメラマン

     
   
     
  19世紀の末、イギリスはヨークシャーの農家に生まれた兄弟、リチャードとチェリー。この二人の関心事は、豊かな自然と、そこに生きる動物たち。周囲の人々が「あたりまえ」に囲まれ暮らしていたとき、2人は、その「あたりまえ」の中にすばらしいものを見つけたのです。かれらを囲むすべてのものは、疑問や驚きや感興をもって、かれらを惹(ひ)きつけてやまなかったのです。

  いったんはロンドンに出て仕事に就いた兄・リチャードと、後を追ったチェリーですが、都会の喧噪(けんそう)にはなじめず、週末を郊外で過ごすようになります。そして偶然手にした1台のカメラが、2人の運命を変えました。

  ファインダーに収めたツグミの巣の映像のすばらしさは、2人をして寝食を忘れて鳥たちの写真を撮る道を選ばせたのでした。

  一歩でも、鳥たちに近づきたい。現代に比べれば資材や技術はつたなくても、2人の発想や工夫は飛び抜けていました。数々の偽装を凝らし、ついにはホンモノの皮で作った牛のハリボテで「場」にとけ込み、数々の傑作をものにしていったのです。

  その成果は1冊の写真集にまとめられ、当時の自然愛好家たちのバイブルとなりました。

  そして、弟のチェリーは後年、著名な探検家としても名をはせた由。巻末に、かれらによる写真を収録した、ひとあじ違う伝記絵本です。

  【今週の絵本】『牛をかぶったカメラマン』R・ボンド/作、福本友美子・潔/訳、光村教育図書/刊、1575円(2009年)。

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