盛岡タイムス Web News 2010年 11月 17日 (水)

       

■ 〈過ぎ去りし日〉29 横澤隆雄 土間

     
   
     
  私が子どものころ住んでいた家は茅葺(かやぶき)屋根の曲がり家でした。人間の居住スペースと厩舎との間が直角に曲がっているのですが、その曲がった部分に土間がありました。土間は玄関を兼ねていたり牛が顔をのぞかせていたりと、とても不思議な空間でした。

  土間には「やだ釜」とも「豆腐釜」とも呼ばれる大きな釜があり、牛の餌を作る道具やら豆腐を作る道具やらが整然と並べられていました。また、家族の履物が乱雑に並んでいたり、雨の日は傘が開いて乾かされていたりと、ある意味で多目的ホールのような役割を果たしていました。

  土間の奥には裏口があって、薄暗い土間の中に立って裏口に目をやると、その向こうに見える景色が四角に切り取られて一枚の絵のように見えました。

  幼いころはこの絵の中に裏の畑で作業する父母の姿を当てはめて見るのが大好きでした。現在の実家に土間はありませんが、今でも土間のある家にお邪魔すると、幼いころに見た光景が頭の中に浮かんで来ます。
(紫波町在住)

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