盛岡タイムス Web News 2010年 11月 25日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉335 岩橋淳 やきいもの日

     
   
     
  やきいものできるまで、の絵本ではありません。

  りっちゃんが、大の仲良しのれいちゃんとケンカしてしまったのは、おそらくはたわいのないことが原因だったのです。何が原因だったのか、作中では触れられていません。触れるほどのことですらなかったと思われます。でも、その場の勢いか、あり余る若さの為(な)せる業か、後に引くことなど、二人の女の子には思いもよらなかったのも、また事実だったのでしょう。

  やり場のない憤懣(ふんまん)を、さっきまで二人で遊んでいた公園の木の下に積もったいっぱいの落ち葉にぶつけていると、それはいつしか、ふかふかの蒲団(ふとん)になって。そこにもぐりこんだりっちゃんが見上げる、秋の空。少女の心に、空が映したものは?

  心のどこかでキッカケを探していた彼女たちの気持ちを融かして結び直したのは、色とりどりの落ち葉を集めて焚(た)いた、おじいちゃんのやきいもでした。あつあつ、ほくほくをほお張れば、お互いなぜだか素直になれたのです。たくさんの涙と引き換えにはなりましたけれども。

  ふかふか落ち葉に包まれて、今度は二人で見上げる、空。どこまでも高く、蒼(あお)く、澄んでいたことでしょう。

  【今週の絵本】『やきいもの日』村上康成/作、徳間書店/刊、1575円(2006年)

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