盛岡タイムス Web News 2010年 11月 28日 (日)

       

■ シダのヒ素吸収力を研究 盛岡農業高環境科学科に高い評価

 盛岡農業高校環境科学科の森林文化研究班は、東北自生のシダを使ってヒ素で汚染された泥を浄化する研究に取り組み、高い評価を得ている。今年度はこれまでに、日本学校農業クラブ連盟東北大会プロジェクト発表環境の部で優秀賞、全国産業教育フェア意見・体験発表の部でも第2位に当たる優秀賞などを受賞した。かつて、旧松尾鉱山跡地から流れ出す強酸性のヒ素鉱毒水を堰き止めていた四十四田ダムの底深くにも環境安全基準の1000倍に当たる高濃度のヒ素泥が堆積(たいせき)している。研究班の生徒たちは、こうした環境問題への市民の関心を高め、シダの力を浄化活動に生かしてもらえるよう働きかけていきたいとしている。

 同校の森林文化研究班は4年前から、旧松尾鉱山など有害物質で汚染された土壌を植物の力で浄化する研究に取り組んできた。現在、活動しているのは3代目となる研究班で、メンバーはいずれも環境科学科3年の村上和子さん、中村恭平君、杉澤侑也君、尻高澤和也君、山田裕稀君、菊地飛雄馬君、齋藤大介君の7人。酸性土壌を中和する能力を持つダケカンバや鉱毒水にも含まれるヒ素を吸着するモエジマシダといったスーパー植物を研究した先輩たちのあとを引き継ぎ、東北自生のシダ植物のヒ素吸着能力を研究した。

 モエジマシダは2001年に米国でヒ素を吸着することが分かった植物だが、国内では九州地方などが主な自生地。県内の汚染土壌の浄化に活用するためには、東北地方に自生する植物の利用が望ましいと考えた。

  そこで東北に多く植生する6種類のシダを使って、ヒ素に対して抵抗力があるか実験。濃度が異なる3種類のヒ素水溶液で栽培試験を試みたところ、特に「ハクモウイノデ」は四十四田ダムの底に堆積する泥と同等の1500ppmのヒ素濃度にも抵抗力があることが分かった。

  このため、ダム底と同程度のヒ素が含まれる八幡平市の旧松尾鉱山新鉱水中和処理施設の泥で2カ月間シダを栽培する本格的なヒ素抵抗力試験を実施。ハクモウイノデの体内ヒ素濃度は、シダ1c中に、約1・5_cと顕著な含有率を示し、東北に自生するシダにも、ヒ素を浄化するスーパー植物の素質があることを発見した。

  実験結果によると、ハクモウイノデ1株は2カ月間に、ヒ素50_cを吸着することになり、仮にヒ素汚染土壌10dにシダ2万株を植栽すれば、2年半でヒ素を完全に吸着できる計算になる。

  かつて四十四田ダムに堆積したヒ素を含んだ泥は深部にあり、洪水を考慮しても高濃度のヒ素を巻き上げる可能性は低いとされる。ただ、ダムは堆砂容量の84%(07年度現在)まで堆砂が進行しており、上流部に新たな貯砂ダムを整備する方向で検討が進む。

  研究班は、こうした問題やシダの力について関心を持ってもらうため、昨年は地元商店から提供を受けたおもちゃのカプセルでシダ栽培キットを作り約2500個を配布。今年も盛農祭で環境問題に関するアンケートと合わせて、ヒ素を吸着するシダ植物で作った「しおり」を配りアピールした。

  「ヒ素の怖さを知って、いろいろな人に知ってもらわなければという気持ちになった」と山田君。村上さんは「いかに多くの人に研究の成果を知ってもらうかが大事だと思う。研究成果を生かしてもらえるよう行政にも働きかけていきたい」と話す。

  研究班を指導している牧一郎教諭は「環境問題は次世代に伝えていかなければいけない。生徒たちが地域の課題と向き合い、さまざまな人とかかわる中で、メッセンジャーとしての役割を果たしてくれれば。郷土愛を感じながら生きていける人間に育ってほしい」と願う。

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