盛岡タイムス Web News 2011年 1月 19日 (水)

       

■ 〈過ぎ去りし日〜北上山地の写真帳〉38 晩鳥 横澤隆雄

     
  晩鳥(昭和60年ごろ、川井村=現宮古市=箱石にて)  
 
晩鳥(昭和60年ごろ、川井村=現宮古市
=箱石にて)
 
  私の曽祖父は晩鳥(ばんどり)撃ちの名人だったのだと聞いたことがあります。その昔、集落の奥に晩鳥の集まる木があり、毎年初冬の頃に一度だけ晩鳥猟に出かけたのだと言います。

  晩鳥とはこの地でムササビのことを指す言葉です。ムササビは夜行性で猫ぐらいの大きさ。前脚と後脚の間に飛膜があり風呂敷を広げたような形で木から木へと滑空するのが得意な生き物です。晩鳥という呼び名は飛んでいる姿を鳥に見立てたものなのでしょう。

  「晩鳥の木は大きな木でな〜、空いっぱいに広がった枝に柿の実がなったようにいっぱい晩鳥がたかるもんだ〜、だからなんぼでも撃ち放題さ」と、ばあさまに話したあとで、鉄砲を担いで意気揚々と出かけたじいさまだったのですが、持ち帰った獲物はなんとたった1匹だったと。

  「柿の実のようにいっぱい晩鳥がいても1匹しか獲れなかったのすか?」とばあさまが聞くと「柿の実だって一つしかならない年もあるもんだ〜」と苦しい言い訳をしたのだそうです。その程度の名人だったのでしょう。

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