盛岡タイムス Web News 2011年 1月 25日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉114 及川彩子 平和コレクション

     
   
     
  イタリアアルプス・ドロミテ山塊を望む谷間の町フェルトレ。ここアジアゴから、車で1時間半ほどの、小さな町に「平和」へのメッセージを込めた夢博物館があると聞き、正月明け、家族で訪ねました。

  町外れの館は、牛舎とビニールハウスを改造したユニークな手造り。さっそく、迎えてくれた館長アルドさんの案内で巡る展示室には、世界中から集めたという「平和」コレクションが、所狭しと並んでいました〔写真〕。

  ベルリンの壁のれんが、ニューヨークで起きた9・11事件のビル崩壊の瓦礫(がれき)、アウシュビッツのユダヤ人惨殺の遺灰、大地震で崩壊したローマ近郊の町アクイラの瓦礫…。

  世界198カ国からの寄贈という、これら石や砂のコレクション。その中に、原爆で表面が溶けた広島の瓦の破片も、ショーケースに納められていました。

  数年前、天皇陛下に宛てた手紙のこと、広島市との1年がかりの交渉の経緯などを、アルドさんは気さくに語ってくれるのでした。

  そしてお礼に、現天皇も毎年買い上げているという町の特産「平和ワイン」を広島に贈ったというのです。

  民族紛争、テロ、自然災害…それら悪夢の落し物を、懐かしいこの牛舎に葬りたいというアルドさんの優しい思いが伝わってくるのでした。

  かつて納屋だった牛舎の2階には、ピカソの名言「子どもに返れ」に共鳴する彫刻家たちの、子どもにまつわる作品が並び、館全体の雰囲気を明るくしていました。

  アルドさんは元神父。退職後、ボランティアで孤児院を経営。工場や企業から食料や衣類の寄付を受け、常に数十人もの子どもたちの面倒を見る里親も務めているのです。

  夢博物館は、年中無休・入場無料。見学の後、暖炉の燃える喫茶店で、アルドさんの孤児院で育ったという青年たちの振る舞ってくれた熱いココアが、心に一層しみるのでした。

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