盛岡タイムス Web News 2011年 2月 8日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉115 及川彩子 浴場は夢の跡

     
   
     
  ローマ帝国時代の遺跡が、イタリアをはじめ、ヨーロッパ各地にあります。それらを巡ると、多くは、すり鉢型の巨大な円形劇場や浴場跡で、ローマ人がいかに観劇と風呂好きだったかがしのばれます。

  中でも有名なのが、ローマのカラカラ浴場。3世紀の創設で、それぞれ温度の違う3つの大浴槽が並び、一度に収容できる人数は3千人余。周囲にはアスレチック施設や図書館、商店、休憩所、庭園などがあって、まるで大テーマパークのようだったと言われます。

  この冬、私たち家族が地中海クルーズで訪れた北アフリカのチュニジアでは、海辺に建てられた広大な浴場跡を見学することができました。ローマ人の社交場が、まさに浴場であったことを実感したのです。

  ローマ近郊の港から、乗客・乗員5千人余りの大型客船で地中海を横断、イスラムの国チュニジアの首都チュニスへ。そこは、地中海気候の恩恵を受け、ヨーロッパ各国の工場を誘致するなどした発展地域で、その海岸線にカルタゴ遺跡がありました。〔写真〕

  カルタゴ遺跡は、一見、瓦礫(がれき)の廃虚ですが、ここに、更衣室、温浴風呂、水風呂、サウナ、プールなど100を超える部屋の跡が並び、床はモザイク、柱には彫刻、壁にはフレスコ画が所々に残っていて、その規模の大きさには驚かされました。

  現在、ユネスコの協力で復元計画が進められ、考古学研究の対象になっていると聞きました。

  当時のローマ人の1日は、夜明けとともに労働、午後は、子どもも兵士も奴隷も浴場に行き、温水・冷水を浴び、マッサージで心身ともにリフレッシュしていたのだそうです。

  今のイタリア人は、週に何度かシャワーを浴びますが、浴槽があっても、あまり使わないようです。今の温泉地は、医師の診断書が必要な医療機関。イタリア人の「風呂好き」は遠い昔話。カルタゴ遺跡は、まさに夢の跡なのでした。

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