盛岡タイムス Web News 2011年 2月 17日 (木)

       

■ 〈肴町の天才俳人〜春又春の日記〉24 古水一雄 第十九 夜学会に出る、鬼瓦もとむ

 「第十九」には、6月20日から8月5日までの46日間がつづられている。「第十八」に引き続き杜陵夜学會の様子などが書き記されている。
 
   廿一日 すがはり汁、父が懇話會カヘ
       リミヤゲノそば落雁ナド、夜
       学會ニ出ル、国語一時間、中
       等国語読本の一終リ、次回ヨ
       リハ三巻ニウツル事、英語一
       時間、すぺりんぐB行、K行、
       H行ナドヤル、夜、風スサブ、
   廿三日 夜学會ニ出ル、国語一時間、
       読本巻三ニ入ル、
   廿五日 夜学會ニ出ル、仮名遣い、る、
       ひノトコロ一時間、
   廿八日 夜学會ニ出ル、路ニテ鬼瓦ヲ
       モトム、古道具屋ノ亭主ハ鎌
       倉時代のモノナリトオダテゝ
       ツヒツイ十銭ニナツタ、角ト
       耳トガモゲテ(意:欠けて)
       居ル、国語一時間、英語ハヤ
       ラジニ仕舞フ、帰家鬼ノ鼻ガ
       馬鹿ニ大キイト大笑イシタ、
   三十日 五時前起床
       方言集作ル、三十日ノ勘定出
       入ニ忙殺ス、夜学會ニ出ル、
       国語一時間
       十一時店シメテ就床、
  七月三日 夜学會、国語一時間半、風ア
       レスサブ、東風兄ニ立チ寄リ
       人物評ヲ批評シアフ
    四日 夜学会ニ出ル、仮名遣、は、
       わノ遣ヒ分ケ、口くちト靴く
       つトノかな遣ヒデ味噌ツケテ
       カヘツタ
    五日 夜学会英語一時間、高橋君ニ
       ユベノ靴ト口トノかなづかひ
       ノ誤ヲ申開ク
 
  口を〓くつ〓となまってしまったのだろう。これまでお読みくださっている読者の皆様にはすでにお気づきいただいていることと思うが、春又春の日記の中には時として方言が混じることがある。しかし、短歌や俳句のなかで方言が混じることはめったにないのは、日常語と創作語とでの緊張感の違いなのだろうか。
 
    十日 夜学会ニ出ル、国語一時間
   十四日 夜学会ニ出ル、大強雨、背カ
       ラ尻マデ雨ニ叩キツケラレ褌
       モダラ〓〓ニヌレタ、国語半
       時間、帰途東風兄ニ立チ寄ル、
       十和田湖ナド談、十時過ギ去
       ル、
   十七日 夜学会作文一時間、宮本武蔵
       の題を課ス、東風兄ト夜学会
       ノ維持法ヲ談ズ、鵜川君ハ耐
       エラレヌカラヤメル云々
   十九日 夜学会ニ出ル、英語一時間、
   廿四日 夜学会ニ出ル、東風兄に欠席
       ヲ語ル兄快諾ス
 
  今回の欠席はかねてから計画していた久慈(現久慈市)への旅行のためである。目的地を久慈に選んだ理由は語られていない。25日に盛岡駅を出立して、汽車を乗り継ぎ28日には帰家している。25日から27日の日記はない。旅行中に吟じたと思われる俳句が「久慈の宿」として25句あって自薦の印が付けられているので、次に取り上げておくことにする。
 
     手モ足モ染屋ガ藍ノ団扇カナ
     真清水ヤ十和田ニ急グ舟大工
     塔ヲ去ル絵草紙賣ヤ夏ノ月
     笛ニスベキ竹伸ビニケリ夏の月
     塔ニ上レバ塔下ヨリ蚊ノ鳴キ来ル
     灯ヲ落チテ蚊ガ居ル硯カナ
     灯下ノ書蚊ヲ叩キタル侭ニアリ


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