盛岡タイムス Web News 2011年 2月 22日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉116 及川彩子 タロッコの季節

     
   
     
  イタリア暮らしも15年。この間、ヨーロッパ統一で通貨がユーロに変わり、物価も上昇しました。それでも食料品、特に野菜や果物が豊富で安いのは、とてもうれしいことです。

  八百屋や市場に、山のように並ぶ旬の野菜や果物。特に果物は、小さくて、イビツな形のものまでさまざまですが、見かけによらずおいしいので、みんなキロ単位で買って行きます。

  イタリアでは、品種改良やハウス栽培は、あまり行われないので、冬にイチゴやメロンなどを食べることはできません。旬の期間は短いもので1・2カ月。昨年の夏は、アスパラガスを食べ損ねてしまいました。

  宝石のルビーのようなザクロ、白イチジク、サボテンの実、ラグビーボールのような形のスイカ、なつめ、アーティチョークなども旬が短く、一瞬の季節を彩る食材です。

  わが家の冬の時期のお目当ては、シチリア原産のオレンジ「タロッコ」。見かけは普通のオレンジと変わりませんが、皮をむくと中は真っ赤。「血のオレンジ」とも呼ばれ、熟れると赤黒く、味も一層濃厚になり、甘さも抜群。

  タロッコは、日本でも「ブラッドオレンジ」の名で知られていますが、果汁100%のジュースが約千円と聞き驚きました。

  わが家の隣のスーパーで売られているタロッコは1`約200円。街角の売店にお目見えする搾り立てのタロッコサービスは5・6個絞って1杯150円です〔写真〕。

  イタリア料理では、メロンや洋梨、柿などの果物が「生ハム添え」に使われることが多く、タロッコも例外ではありません。鴨や鳥肉の果汁煮込みは、冬の食卓の代表格です。

  カトリックの国では、リンゴはアダムとイヴの禁断の「知恵の実」。一方「黄金のリンゴ」と呼ばれたオレンジは、人間の堕落と救済を暗示し、多産豊穣(ほうじょう)を象徴してきました。

  血の滴るようなタロッコは、昔から解毒効果もあると信じられ、冬の健康管理も担っているのです。

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