盛岡タイムス Web News 2011年 2月 22日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉274 八木淳一郎 盛岡の宝物

     
  吹雪のやんだ山中に月の光が降り注ぐ夜  
 
吹雪のやんだ山中に月の光が降り注ぐ夜
 
  毎年、夏と冬の2回、夜空の明るさの変化を調べる目的で全国で一斉に星空を観察する催しが繰り広げられます。

  私ども盛岡天文同好会でも10年以上前からこの催しに参加して、盛岡の空の明るさの推移を見守ってきました。それによれば、盛岡は同規模の都市のうちでも割合いい値を示しており、その上10年前と比べてあまり大きな変化がみられません。

  定点観測の場所に選んだ盛岡市子ども科学館の駐車場は、この南側に大型ショッピングセンターができるなどしてずいぶんと夜空が明るくなったように思いますが、肉眼や双眼鏡による観察や写真撮影による測定結果では落胆するほどの悪化はありません。

  もっとずっと昔の、記憶でたどれる昭和30年代の盛岡の町中から仰ぎ見た星空は天の川の流れがはっきりと追え、今とは比べ物にならないほどの暗さでした。

  一般に、都市の発展とともに人工灯火が増え、車の排煙などで大気が汚れるなどして、徐々に見える星の数が減っていきます。しかしそれでも盛岡は、今なお本宮あたりでもショッピングセンターが消灯した夜中には、うっすらとではありますが天の川が見えるのですから驚きです。

  日中でも、例えば東京からの帰りに盛岡駅に近づくころ、新幹線の車窓から見える街並みを見たとき、くっきりと澄んだ景色に、どんなに盛岡の大気が澄んでいるか実感したことがどなたもおありでしょう。

  先日の東京からの帰り、ほとんどの乗客が仙台で降りて車内は閑散としていました。

  仙台からは東京へも1時間半位ですし、新幹線の本数も多く、しかも旅費も安くすみます。東京の施設、例えば科学博物館などの見学やプラネタリウムでのイベントなども頻繁に行って見ることができます。

  その点、盛岡はかなりハンディがあると思ったものでした。しかし、その一方で、東京はもちろん仙台の人たちは、多くの時間とお金を費やさなければ本物の星空を目にすることができません。

  盛岡の子どもたちや市民はそのことで恵まれていることに案外気づいていないのかもしれません。いかに本物の自然に目を向けさせ、そこから何を学びとるか、そのことはひとえに教育行政の手腕にかかっています。

  日本のように資源のない国では人材こそ最も大切な宝であり、ことにも科学はその筆頭であると、ノーベル賞受賞者たちが口をそろえて述べています。

  盛岡は先人記念館という類いまれな施設を有し、そのほどに人材育成に重きを置いた街と言えるのでしょう。ならばぜひとも、過去の財産にすがるだけでなく、未来を見据えて、大切な科学と科学教育の分野に他の都市に負けないほどに力を注いでほしいものです。
(天文同好会会員)


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