盛岡タイムス Web News 2011年 7月 9日 (土)

       

■ 〈東日本大震災〉被災はなます学園へルンビニー苑が応援訪問 楽しく音楽療法

     
  山田湾に面し、津波で全壊したはまなす学園の建物  
  山田湾に面し、津波で全壊したはまなす学園の建物  
  山田町の知的障害者更生施設はまなす学園(芳賀幸一施設長)は、東日本大震災津波で全壊し入所者が避難生活を送る。先月30日、花巻市石鳥谷町の障がい者支援施設ルンビニー苑(三井信義苑長)の職員らが訪問し、音楽療法と昼食の炊き出しボランティアを実施した。不自由な避難生活の中、職員が必死で障害者の暮らしを支えているが、生きがいとなるような活動や娯楽を震災前と同じように提供するのは難しい。そこで、同苑は、同じ障害者施設のノウハウを生かした応援を考えた。ささやかであっても、息の長い支援活動を続けたいという。(馬場恵)

  山田湾に面したはまなす学園では、10代から80代までの知的障害者約40人が職員24人の支援を受けながら生活していた。震災当日、同園は入浴日。職員は着の身着のままの入所者を抱え込むようにバスに乗せ裏山へ。施設は津波で全壊したが、避難の判断が早かったため、全員が無事だった。

     
  三井和子さんの指導で音楽療法を楽しむ、はなます学園の入所者ら  
  三井和子さんの指導で音楽療法を楽しむ、はなます学園の入所者ら  
  入所者の保護者も3〜4割が自宅を流失。入所者を自宅に帰すこともできず、集団での避難生活を余儀なくされた。県立青少年の家などで過ごしたあと、4月11日に廃業した高台の旧陸中海岸ホテル(山田町)に移動。現在は同学園と同じ法人の障がい者ケアホーム希望の入所者合わせて約40人が避難生活を送る。

  建物の水道は2週間ほど前、通水したが、飲料水には使えず、口にする水は施設の外から運んでいる。入浴はホテルに隣接する同法人の居宅介護施設の設備を借りるため週2回、1日がかりの大仕事だ。食事も炊き出しや支援の弁当に頼らざるを得ない。それでも、折り紙で七夕飾りを作ったり、内陸部に散歩に出かけたりと、できる活動を工夫。日常を取り戻す努力が続く。

     
  ルンビニー苑の職員や保護者が作ったラーメンやおにぎりを味わう  
 
ルンビニー苑の職員や保護者が作ったラーメンやおにぎりを味わう
 
  ■有志が訪問、音楽療法

  「ズン、ズンズン、ズンドコ、きよし!」。ルンビニー苑の一行が訪れた日、はまなす学園の入所者らは時折、体を動かしながら、おなじみの演歌や童謡を楽しんだ。指導は三井苑長の姉で音楽療法士の三井和子さん。「じゃあ、次はイントロクイズ。何の曲かな」。三井さんがキーボードで童謡やアニメの主題歌のメロディーを奏でると「はい、はい」と何人かが手を挙げ、歌の続き楽しそうに口ずさんだ。

  同苑からは、この日、職員や保護者の有志10数人が訪問。音楽療法が行われている間に、持ち込んだ食材で昼食のみそラーメンやフルーツヨーグルトなどを準備した。「おっ、ラーメンの匂いだ」。食卓に並ぶ前から、好物が登場するのを楽しみに待つ入所者も。暑い中だが、野菜たっぷり、出来たての手作りラーメンは好評だった。

  旧ホテルでの避難生活も2カ月が過ぎ、生活はだいぶ落ち着いたように見える。ただ、入所者の気持ちには波がある。学園の支援員坂本芳志枝さん(48)は「以前より、ずいぶん明るくなった。けれど、課題はあり過ぎる。入所者の一言も聞き流していいものと、いけないものがある。丁寧に聞く姿勢が必要だ」と語る。

     
  出来たてを味わってもらいたいと、協力して昼食を準備するルンビニー苑の職員や保護者ら  
 
出来たてを味わってもらいたいと、協力して昼食を準備するルンビニー苑の職員や保護者ら
 
  栄養士の佐々木和子さん(54)は「十分な厨房もなく思うような料理は提供できない。糖尿病で血糖値の管理が必要な入所者もいるのだが…」と頭を悩ます。事情を知る同じ障害者施設からのニーズに沿った支援はありがたいという。

  7月半ばには、グループホーム型仮設住宅が完成し、復興への第一歩を踏み出す予定。だが、入所者が無事に新しい環境に慣れてくれるか、狭い厨房で十分な食事が提供できるかなど職員の心配の種は尽きない。

  「支援は本当にありがたい。でも、それにばかり頼ってはいけない、自前で頑張る意識を持たなければ」と芳賀施設長。激務が続く職員の健康を気遣いながらも気丈に話す。

  三井苑長は「少しでも生活パターンが変わると、不安定になる障害者も多いはず。職員の苦労は察して余りある。できることがあれば力になりたい」と被災地で踏ん張る仲間を思いやった。

     
  三枚堂さん(左)から三井苑長に、英国バーミンガム市民の善意も託された  
  三枚堂さん(左)から三井苑長に、英国バーミンガム市民の善意も託された  
  ■英国バーミンガムから義援金届く

  この日のボランティアには、矢巾町のみちのく療育園看護部長の三枚堂静子さん(57)も同行。英国バーミンガムに住む友人の林田理恵さんが、チャリティーイベントを開いて集めた義援金1千ポンド(約13万円)を、今後の支援活動に役立ててほしいと三井苑長に託した。大きな団体ではなく、役に立ったことが分かる個人に寄付したいという林田さんの思いに応えた。

  「やっていることは砂漠の砂粒のような小さなこと。してもしなくても、被災地全体の状況は変わらないかも知れない。でも、一人、二人でも、うれしいと感じる人、頑張ろうという気持ちを持ってくれる人がいるなら行動したい。そういう小さな積み重ねが連鎖していくことが大事なのだと思う」と力を込める。

  ルンビニー苑で被災地支援を中心になって進める多田寿子さん(49)は「被災者の多くが仮設住宅での生活に移る。高齢者や障害者が外に出て、触れ合う機会を提供したい。弱い立場にある人を支援する活動を息長く続けたい」と話した。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします