盛岡タイムス Web News 2011年 7月 13日 (水)

       

■ 〈東日本大震災〉支援に必要な視点とは 神戸復興塾長、小森星児氏に聞く

 盛岡市は、被災地の支援活動を強化するため、宮古市川井にボランティアが無料宿泊できる「かわいキャンプ」を開設。盛岡市内丸には、一時避難している被災者を支援するための「もりおか復興支援センター」も立ち上げた。どんな視点を持って被災者の支援に臨むべきか小森さんに話を聞いた。

  -センターが役割を果たしていくために、どんな配慮が求められるか。

  小森 まず、お客(被災者)のニーズをつかむこと。センターで待っているだけではいけない。避難所がまだ開設されているのなら、すぐ、そこへ行って、どんな課題を抱え、どんな情報や支援が必要なのかつかむ必要がある。ニーズは月ごとに変わる。それを早くつかまなければ本来の責任は果たせない。

  新聞も沿岸の情報が載っているものをそろえる。センターの壁には各地の復興計画の図面ぐらいは貼っておく必要があるだろう。個別の詳しい問い合わせは直接、市町村にしてもらうにしても、沿岸被災地で暮らしているのと、ほぼ同じ条件で基礎情報が入るようにすべきだ。

  -センターの主要事業に被災者の相談業務がある。

  小森 レベルの高い相談活動は無理。実際には市役所の窓口の担当の判断を待たなければならないような内容が多いはずだ。被災者は悩みを打ち明けにくる。むしろ心のケア、傾聴に力を注ぐ。「聞いてもらって良かった」と安心感を持って帰ってもらうことが大事だ。

  -かわいキャンプを生かすために必要なことは。

  小森 やはりボランティアをしたいと思っている人のニーズをつかむこと。これに応えなければいけない。ボランティアは五体満足、健康な人が来て、泥かきをするというような発想は、あまりにもステレオタイプ。高齢者が仮設住宅を訪問したり、障害のある方が、障害のある被災者の話相手になるということも十分あり得る。

  見た限りキャンプは最初から障害者や高齢者が来ることを想定しておらず、階段やトイレの配慮はなかった。ニーズは常に変わっており、いつまでも震災直後のボランティアのイメージにとらわれてはいけない。ボランティアにしかできないことに目を向け、やってもらうことを考えていく必要がある。

  -ボランティアにしかできない仕事とは。

  小森 阪神淡路大震災のとき、僕は短大の学長で、うちの学生たちは被災地で何の役に立つだろうかと考えた。食物栄養や工業系の学生はそれぞれ関連する現場へ、情報系の学生はデータの打ち込みに派遣した。さて、幼児教育学科の学生たちは、どうする、使い道がないなと。

  しかし、いざ現場に送り出し一番歓迎されたのは、幼児教育学科の学生たちだった。避難所では子どもたちが、退屈しきっていて、学生たちは引っ張りだこ。帰り際には「また来てね」と泣き出す子さえいた。これを見てうれしかったが、恥ずかしかった。僕自身がステレオタイプだった。子どもの教育、スポーツ、お年寄りの傾聴、花植え|。これから、ますますいろいろなボランティアグループが出てくると思う。

  -被災地で取り組まなければならないことは多い。

  小森  答えは案外、単純。みんなに希望を持たせ、生活設計を描けるようにしていくことだ。被災地で今、何より必要なのは「キャッシュ・フォー・ワーク」。最低賃金ぎりぎりでいいから現金収入を作る。本来、泥かきなどは地元の人をきちんと有料で雇い、積極的に雇用の場を広げるべき。国や県から入るまとまったお金は生活再建に充ててもらい、毎日の暮らしに必要な最低限のお金は自分で稼げるようにする。お金は入るから働かなくていいというのは一番良くない。

  -支援活動に携わる人へアドバイスを。

  小森 活動を通して自分が成長すること。仕事には違いないが、仕事を通して新しい経験を積み、次の仕事に生かせることが大事だと思う。所属する団体にもミッションがある。その中で自分でもミッションを持って仕事をしてもらわないとうまくいかない。

  被災者に的確なアドバイスをするなんて大それたことは考えないほうがいい。話をうかがっているうちに、被災者自身が問題の所在を悟り、心が決まってくる。それを助けるぐらいの心構えで向き合ってほしい。


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