盛岡タイムス Web News 2011年 8月 11日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉367 岩橋淳 戦争をくぐり抜けたおさるのジョージ

     
   
     
  名作絵本を評して「世代を超えて読み継がれる」と言うことがありますが、その代表格のひとつ、しりたがりやの子猿・ジョージが活躍する『ひとまねこざる』。日本での発売は1954年、半世紀以上も親しまれていることになります。

  作者・H・A・レイ(本名ハンス・アウグスト・レイヤースバッハ/1898〜1977)は、ドイツで少年期を過ごしました。動物園に通い詰め、絵を描くのが大好きな、と言えば、その後の彼の活躍が目に見えるようですが、道のりは、そう単純なものではありません。

  学生時代には語学を学んで5カ国語を習得し、軍人として第1次世界大戦を経験し、復学、就職ののち、スケッチブックを抱えてブラジルへと渡るのです。

  かの地で昔なじみの写真家・マルガレーテと出会ったのも、運命の不思議さ。協同して仕事をし、やがて2人は結婚。パリに居を定めた2人は、やがて絵本の創作に打ち込み始めます。しかし、そこに迫ったのは、第2次世界大戦の軍靴の響きだったのです…。

  本作は、夫妻の業績に敬意を表する作者によって編まれた、絵本スタイルの評伝。ドイツ、ブラジル、フランス、アメリカと、夫妻の足取りをたどりながらの根気強い取材を積み重ね、レイ作品を思わせる画調で、夫妻の人生、作品世界に寄り添うための工夫が凝らされています。

  人気絵本の誕生を支えた歴史秘話、読みやすく、かつ重みのある1冊です。

  【今週の絵本】『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ』L・ボーデン/文、A・ドラモンド/絵、福本友美子/訳、岩波書店/刊、2415円(2005年)。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします