盛岡タイムス Web News 2011年 8月 13日 (土)

       

■ 〈昆虫パワーをあなたにも〉7 鈴木幸一 科学はシルクを食べるようにした2

 朗報です。ネズミの実験ですが食べるシルクで記憶力回復と毛質改善を明らかにすることができました。

  私どもの発見の前まで、ネズミにシルクパウダーを食べさせると、血液中のアルコール濃度が減少する働きは分かっており、ヒトに当てはめてみると二日酔いの改善になります。しかし、下戸の私にとってはまったく興味がわかず、広く普及するためのインパクトを探し求めました。

  シルクパウダーはアンバランスなタンパク質であり、通常では考えられないアミノ酸のグリシンが43%、アラニンが33%の異常値です。しかしグリシンとアラニンは、脳内の神経伝達物質の仲間です。脳内物質として作用するならば、2種類の豊富なシルクパウダーにより脳機能が改善するかもしれないというアイデアが浮かびました。

  昆虫の研究室でネズミを飼育して、脳機能を調べるという前代未聞のプロジェクトのスタートです。試行錯誤を重ね、老化ネズミ、または化学物質で一時的に認知症にしたネズミに、シルクパウダーを水に溶かして5週間ほど飲ませて記憶力をテストしました。

  その結果、老化ネズミでも一時的な認知症ネズミでも記憶力が回復したのです。これは予想通りであり、同じような研究結果が韓国でも報告されています。

  ところが、思いも付かなかった機能が見つかりました。記憶力の実験のひとつで、プールに水を張りネズミを泳がせます。彼らは水中の止まり木を覚えますが、これを取り除き、同じ場所のクロス回数やスピードを測定して記憶力の増減を算出します。実験が一通り済んだネズミをプールからすくい上げ、濡れた体をタオルでふいてやります。この時、担当の学生が気付きました―。

  シルクパウダーを飲んだグループは、水滴をはじき滑らかな毛質になっていると。発見は、飲む毛髪剤になるかもしれない新しい機能です。アンバランスなタンパク質のシルクパウダーには、予想した記憶力回復と予想しなかった毛質改善があります。

  私の朝食は実に手が込んでいます。約四半世紀にも及ぶ完成に近いメニューです。雑穀パンに少々のバター、練りゴマ、つぶ餡(あん)を塗ります。それに卵焼き、野菜と果物(トマト、バナナ、リンゴ、もう一品は季節の果物)、コーヒー、桑茶です。

  極め付きはシルクパウダーを入れたヨーグルトで、ただいま人体実験中でございます。

     (岩手大学地域連携推進センター長、岩手大学農学部応用昆虫学研究室教授)

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