盛岡タイムス Web News 2011年 10月 20日 (木)

       

■ 「企業選別」県議会で懸念の声 二重ローン対策の復興機構

 東日本大震災津波で被災した事業者の二重ローン問題の解消策の一つとして設立される「県産業復興機構」について、19日の県議会商工文教委員会で議論があった。同機構は国(中小企業基盤整備機構)が8割、残る2割を県と県内金融機関が出資して設立。被災事業者の旧債権を買い取り、凍結することで、金融機関からの新規融資を促し事業の早期再建を後押しする。過去の大災害時にはなかった救済策で、その効果が期待されるが、債権の買い取り対象となるのは「再生可能性がある」と判断された事業者のみ。その判断をする専門家の4分の3が、銀行関係者ということもあり「限られた優良企業しか救済されないのでは」と懸念の声もある。

  同機構は当初、県と県内金融機関が20億円程度(うち県は5億円)、国が80億円程度を出資して設立。機構は、債権買い取り後、一定期間(5年から10年程度)、元本・金利弁済を凍結。期間経過後に事業者の再建状況を確認し、必要な金額を債権放棄する。残りの債権は事業者が金融機関に返済する。機構への出資総額は約500億円を想定している。

  事業者の相談窓口となる県産業復興相談センターの専門家が、震災前の事業実績や企業の将来性などを総合的に勘案して債権の買い取り金額を判断。債権者間の調整を図る。同機構に債権買い取りを要請するのは、金融機関などからの新規融資が見込まれ再生可能性があると判断された事業者のみだ。

  このため、委員からは「再建を希望するすべての被災企業の期待に応えられるかどうかが、この制度の試金石となる。選別と切り捨てがあってはいけない」「産業復興機構に相談に訪れるのは金融機関との自前の交渉で理解が得られなかった事業者。金融機関の判断より大きな視点で将来性を見なければ、機構の意味はない」といった意見が相次いだ。

  センターは県内金融機関や全国銀行協会などから37人の専門家の派遣を受け、体制を構築。7日から相談受け付けを開始した。県によると37人のうち29人が銀行関係者、その他が中小企業診断士、税理士、監査法人職員。特に相談が集中するとみられる商工会議所や山田、大槌、陸前高田の商工会には専門の震災アドバイザーも配置した。

  19日までに来所、電話を含め85件の相談があったという。センターでは債権の買い取りだけでなく、事業再建の計画づくりなど幅広い相談に応じる。

  県の調べでは県内地銀3行の沿岸被災地における貸し出し総額は約2千億円で、うち1200億〜1400億円が企業に対する貸し出し。この中でどの程度が返済不能な借金かは不明だが、実際には1千億円以下に圧縮されるとみている。

  県は当初、国の公的資金による簿価での債権買い取りを要請していたが「モラルハザードになりかねない」と指摘され制度設計がうまく進まなかった。

  県と県内銀行が参加する形での機構立ち上げに至ったことについて斎藤淳夫商工労働観光部長は「われわれとしてもある程度の痛みはやむを得ない。生きる見込みのある企業を一刻も早く市場に返し、経済活動をしてもらうことのほうがプラスになる」と説明。「銀行が明らかに優良だと判断したもの以外をどうやって救っていくかが機構の役割」と述べた。

  国では、零細企業などを幅広く救済する別の債権買い取り制度も検討されている。

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