盛岡タイムス Web News 2011年 10月 21日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉47 八重嶋勲 青年に小説を読ませていいか

 ■猪川浩拝
  78 巻紙 明治35年5月6日付(つづき2)
 
来會者皆やる、概して今日は人数の集まらぬ所から大失敗、それに外面を通りかゝりの人の為め幾分か元気そそうする様な譯にて盛大なりする能ず、忘却以後はほんにごあいさつなり、佐々木友治君の如きハ抜群の勇士なり、その気愛すべくそのいとけなきを愛するなり、夜に入りて五分演説あり、會ニ席主来りて傍廰す、それより「青年に小説を読ましていヽか悪いか」とのトウ論を初め九時になりて未だ容易に決せず、斯の如くにして見れば眞に小説その者を解するもの否文学を解するものなし、少かに村上君など取るべき點あるのみ、櫻羽場の如きに到りて「婦人と恋愛」でこういってヾムるの何のと耳のいたい事許り言ふ、未だ馭し難き人間なり、されど兄よ安可れ、予はかヽる弱輩を取らへてこれに安んずるものと思惟する勿れ、只予は余りに実力なきを概して実力なきに耻ちずはあらず、決して小山の大将に非らざるなり、予は老後の後までと勉強せんとするものなり、予は眞に予の價値を認めつヽあるなり、予は弱卒なり、田舎の三文ゼントルなるべきなり、英才なる兄等が身の上を思ふて暗涙に咽ばさるを得ざるなり、兄よ幸に予を憐み玉へ、

兄が御懇徳なる訓諭決して忘るヽものにあらず、されど兄よ安かれ、予は教育家とならんとするも尚々一層の奮励と勉強を以って予が品性を正し常識を補ひ行かんとするものなり、自ら情性を淘汰し去らんとするなり、而して幸ひに兄等あり、然れども兄よ、予は果して教育家に適すべきや、否されど幾分か予か思想に教育的傾向を生じ来れるは自ら不審とする所なり、大なる文学者も要あり、大なる教育家大なる宗教家も必要なり、而して彼等か成す處の影響の結果は蓋し同一揆に期するものなり、社會の進捗一にこれなり、

されど兄よ兄がしきりに連呼せらるヽ品性なるものは如何にして養ふべきか、予に教導を垂れ玉へ、目下学校の教科書プラクチカル・ウヰズドム中に眞の紳士といふ題に三十八頁に渡る大論文を掲げてあり、これに依って日々利する處少々ならざるなり、今その巻頭に於ける文学を抄出せば、
   character-(等英文二十四行。判読不能につき省略)
(あきが来たればこれにて廃す、今後御便りの度毎にケャラクターより抄出してまゐらすべし)
品性それ斯の如し、尤も人類として高尚なる貴ぶへきものなる事解するを得たりと雖もその行くべき方便を知らず、宗教家か信仰を進めずして信仰を解く愚昧の人に解を教へて何の利するものぞ、予も品性の必要なる猶ほ渇者の水なり、されど如何にして水を求むべきかを知らず乞ふ幸ひに師導を垂れよ、
      予は大に勉強しつヽあるなり、兄もよく勉強せられよ、兄が目出度き曙、予も兄と手を採るの日づけは密かに祝しつヽあり、僥倖を庶(こいねが)ふなかれ、着実に成すべきを成し玉はヾ必ず期する處あるなり、それ勉めよ焉、
               (つづきがあります)


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