盛岡タイムス Web News 2011年 10月 22日 (土)

       

■ 〈昆虫パワーをあなたにも〉12 鈴木幸一 公開シンポジウム開催の訳

 最近、企業の代表の方がこぼしていました―。大学と共同研究するのですが、先生方は製品化のモデルを提案してくれないので、私どもは具体的に製品開発ができないのですよ。

  ご存知のように大学は、教育と研究という大きな使命がありますが、平成18年度の教育基本法の改正により、第3の使命として社会貢献がうたわれています。研究成果を社会に役立てることが重要な課題となっています。

  もちろん、研究という生業のエネルギーは面白さがなければやる気も起こりませんので、知的興奮が研究活動の源泉ですが、社会貢献となれば強烈に意識して研究成果の出口を求めることになります。

  逆に、研究者自身がまったく社会貢献を意識しなくとも、素晴らしい研究成果は一人歩きすることもあります。私たちの研究成果は、後者の例に遭遇するのはまれで、やはり強く社会貢献へとエネルギーを注ぎ込むことが必要です。

  大学側から製品のモデルを提案するということは並大抵のことではありません。研究成果は論文や特許出願になりますが、その先に製品開発のモデルを生み出すためには、社会のニーズと見事にマッチングし、そして市場をつくる可能性が高くなることでやっと世に出回ります。

  これまでの桑やシルクパウダーの研究を、何とかして企業さんとの共同研究に結び付けるか、共同研究しなくとも商品開発をサポートできないかという道を探ってきました。そうすると、京都の企業さんとは食べるシルクパウダーからひとつの商品が生まれ、福島の企業さんとはすでにある商品(カイコ冬虫夏草)をバージョンアップしたもの、岩手の企業さんにはアドバイスした商品が販売されるようになりました。

  市場をつくるには道半ばですが、11月5日(土)に「地域と昆虫産業」という公開シンポジウムが開催されます。これに参加していただければ、なぜ昆虫産業か、どうして昆虫関連の製品開発が進められているのか、さらにその展望は、という疑問に応えられるかもしれません。

  大学の第3の使命である社会貢献については、「宮澤賢治あるサラリーマンの生と死」(佐藤竜一著、集英社新書)から学んでいるのですが、まだまだ賢治さんの足元にも及びません。

  (岩手大学地域連携推進センター長)

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