盛岡タイムス Web News 2011年 10月 27日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉376 岩橋淳 野はらの音楽家マヌエロ

     
   
     

 カマキリという昆虫は、なにかにつけどう猛非情の代表格のように扱われることがほとんど。ですが、今週のご紹介は、それとは正反対、音楽を愛し、奏でようという1匹のカマキリを描いたものです。この作品のポイントは、主人公たるカマキリを、これはもちろん擬人化しているのですが、冒頭、木の枝にとまり、そよぐ風に乗って届くはるかな音楽(これは野外ホールで演奏される人間のコンサート)に耳を傾けるその姿が、この孤高の生物のカタチにハマッているところ。本来なら警戒、索敵のためであろうこのポーズが、対極の芸術に向けられているという発想が秀逸です。

  自分でも演奏をしてみたいという主人公・マヌエロの願いは、その思いとは裏腹になかなかかなえられません。お気に入りの楽器になぞらえた工夫も、裏目の連続。捕食者である自らの立ち位置や身体の構造もあいまって、悪戦苦闘の連続です。

  作者は、ぬいぐるみのくまの小冒険を描いて人気の定番絵本『くまのコールテンくん』を手がけた、ドン・フリーマン氏。一見戯画化されたように見えてその実、虫たちの生態を捉えた描写は画家としてのセンスを、主人公のたどる紆余曲折をめぐる構成の妙はストーリーテラーとしての力量を、十全に発揮しているといっていいでしょう。

  やがて訪れる冬を前に、毎夜上演される虫たちのリサイタル。耳を傾けてみてはいかが?

  【今週の絵本】『野はらの音楽家マヌエロ』D・フリーマン/作、みはらいずみ/訳、あすなろ書房/刊、1470円(2004年)


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