盛岡タイムス Web News 2011年 10月 31日 (月)

       

■ 〈詩人のポスト〉吉野重雄 遠い日のバリカン

 遠い日のバリカン
              吉野 重雄
太平洋戦争で
東京から疎開してきた沢内は
近くに床屋さんなどなく
坊ちゃん刈りが伸び放題になって
女子(おなご)みたいだと
みんなに囃された
 
雪が消えたコンクリ橋の上で
面子(ばった)をして遊んでいたときだ
 
おら家(え)さ来い
仲良しになった奴が
帰りにこっそり誘ってくれた
干し餅を一連(ひとつら)
二人で平らげてから
あばが手にしたバリカンで
あっという間に
つんつるてんにされた
 
次の日
学校に行ったら
みんなで寄ってたかって
つるつる頭をぺたぺた叩かれ
文句なしの仲間になった
 
思い立って昨日
南昌山に登ってみた
赤いコンバインが小さく
黄色に実った田んぼの中を
行ったり来たりしていて
まるで
バリカンで刈った坊主頭のように
縦と横の縞模様を描いていた
 
耳の奥で
遠い日のバリカンの音が
いつまでもしていた

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