盛岡タイムス Web News 2011年 10月 31日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉43 照井顕 横澤和司のリアルタイム

 水上優が「冷たい刃先」という仮題を変更し「リアルタイム」という詩集を出版したのは1990年4月1日のことだった。水上優とは詩人・横澤和司(かつし・57)のペンネームである。

  この詩集のタイトルが示す通り、その詩の内容は、いいことも、悪口ととられそうなことまでも、リアルこの上なく書かれていたために、彼を知る、書かれた人たち(そう思った人たち)が、あいつは精神に異常をきたしているなどとうわさして、物議をかもしだしていた。

  当時はコンビニに勤務しながらの一人暮らし。カップラーメンやおでんなどの偏食と過労のため、体に変調をきたした時、店長に連れて行かれたのは何と精神病院だった。連れてった店長と院長が話している時、ケアマネージャーの看護師が彼を見て、話を聞いて「この人まともですよ」と言ったというが、そのまま強制的に4カ月間の「精神病患者生活」を送らされた。

  その病院から出た時、彼は僕の店にやって来たけれど、まるで老人のような足取りとなり、頭も顔もぼんやりとした、まるで廃人のようになっていた。そののち元気を取り戻してから、病院でのことを「告発」という詩にして僕に持って来たことがある。

  「狭い空間に押し込められ、鍵をかけられ、眠剤を無理やり飲まされ、自由を剥奪され、社会から遮断され、希望はありません。楽しみは食事だけ。欲求不満に耐えてます。ストレスに晒(さい)なまされています。ここは墓場です。人間喪失になります。訴えても取り上げてもらえません。虐待です。虐殺です。」詩には所々にこんなことが書かれていた。

  彼は今、精神障害者2級になり、その年金で生活する「専業詩人」。彼から湧き出る「即興詩」の語りは、聞く者たちを彼の世界に誘い、涙をあふれさす。僕が、彼の書いた膨大な量の詩編の中から拾い書きして、2005年5月に、盛岡市立図書館に展示した書の「共観詩歌展・野の花のように・風のように」は多くの人たちが見に来てくれたが、特にも女性はほとんどの人が涙し、嗚咽(おえつ)し、立ち尽くし、読み通して帰って行った。

  彼は、小学5年生の時、自殺した母の「心」を目標に、それを超えるために、今もただ、ひたすら、詩を書き続けている。
(開運橋のジョニー店主)


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