盛岡タイムス Web News 2011年 11月 4日 (金)

       

■ 〈潮風宅配便〉72 草野悟 スペシャリティ昼食「直利庵」

     
   
     
  わたしにとりまして、昼食へのこだわりはかなり強く、いつも悩んでいます。食べたいものだらけで決心がつかないからです。宮古にいますと、昼食が楽しみで11時30分頃から、喉の奥に唾液が溜まり始めます。満足できた日、できなかった日、それも人生なのです。

  盛岡へ戻りますと、「必ず行きたいところ」が3カ所あります。25年も前から慣れ親しんだ店「直利庵」は、どこへ行っても思い出します。裕子さん(女将さん)の優しいほほえみ、仲居さんたちのてきぱきした動き、親方の生真面目な腕、不思議とどれを思い出しても涎(よだれ)が出てくるからなんか変です。裕子さんを思い出して涎?、やっぱり変ですね。

  本題に入ります。直利庵の超スペシャルメニューは、「半親子丼」と「もりそば」の組み合わせです。具はそのままでご飯が半量の親子丼ときたら、まるでイーハトーブ、お昼の理想郷なんです。

  上品なだしに絡まった細切タマネギの甘さと自慢の天カスが程よくバランスを取り、真っ白なご飯と見事なハーモニーを奏でます。半熟の卵が食欲増進剤となり、一気に平らげますと次は「もりそば」となります。

  この「もりそば」こそ直利庵の一押しなのです。手前の白菜の一夜漬けはサービスです。しかも絶品。これが106号線の終点、肴町にあるもんですから、つい理由をつけてお昼に出張となります。素晴らしい発想に自画自賛です。

  直利庵の親方のもう一つのメニューに「三陸宮古のナメタの煮付け」があります。それはそれは表現できない芸術の域、思い出してしまうと当然舌の隣にある涎分泌線からどくどくと流れてきます。

  震災後、親方も心配していました。今年は入荷するかな、と。大丈夫です。沿岸の漁師の皆さんはコツコツと一歩ずつ前進しています。これから年末に向かって、魚界の大吟醸「ナメタ」は必ず復活します。

  最近は途絶えていますが(催促ではありません)、時々裕子さんが、私の転勤先に「田舎の母親らしい」漬物やら手打ちうどんやらを送ってくるものですから、つい里心がついて泣き出してしまいます。罪な「直利庵」なのです。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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