盛岡タイムス Web News 2011年 11月 4日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉49 八重嶋勲 猪川浩 暴風のため盛岡の損害少々ならず

 ■猪川浩

  78 巻紙 明治35年5月6日付(つづき4)
 
暴風と火事=二十九日曙より三十日の宵まで吹き荒みたる暴風の為め盛岡の損害少々ならず、特に農林学校の屋根のまさ四百円價許り吹き飛ばされたりとの噂あり、然るに頃日東京新聞初め東北河北新聞が盛岡大火なり傳へたる由、何かの訛傳なるべし、尤もイタコ連中にて盛岡に災火あるとの説紛々として世論あるよし、よしなき事なりとも心にかヽりていやな気かするなり、然るに昨日四日沼宮内にての大火事全市街を烏有に帰したる由、いたましき事にして汽車の煙筒よりなりとて大騒動、沼宮内驛長青くなり黒くなりして居る由、みんな辨償する事にすれば四五十万円は下らざるべしと、然るに不計も今朝鍛冶町にて火事ありて(十戸許り焼けたり)暗きよりさわきたり、又学校へ行くとき仙北町に火事ありとて大騒動ブッソウ也、沼宮内にカンゴフは行くトビは行く大変なり、ケガ人より死人の方が多いとはなほ大変也、何れブッソウの世の中、
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○高等学校試験科目に今度ハ歴史がなくなり地理が這入り申し候、されば平賀君歴史の教科いらなかったら貸しくれませんかと御願ひ被下度願上候、
    一、西洋史綱、
    一、内国歴史、
これ丈にて澤山にて候、物理は求め候らヘバ宜敷候間御願ひ被下様至急願上度候、それは外でもない教科書がないと勉強か出来申さず候間至急とのみ願ひ上くる次第に候、
○露子君が予に讀書をすヽめてよこされ候、又日本派の俳人を頭ごなしに悪く言ふてよこされ候、これは多分何かの間違ひか一寸あいたからなるべく候、吾人を罵倒至らざる所なかりし子は今この有様笑止とやいふべきであるから目駄に人間ハ悪せられぬもの後生の程おそろしい、
○今の日蓮宗の人は少しく狂的なり、その熱心なるは御存敬虔の情に堪へぬものなりと雖も彼等は常に日蓮を知りて釋迦を忘却せんとしつヽあるなり、折伏主義を唱ふる為め日蓮をのみ説くものか日蓮宗は折伏の為めに全々成り上りた宗教にもあらざるべし、日重日乾日遠を甚だしく罵倒するものあり、少しく考ふべき事なりとす、されどこれ丈日蓮が後生幾百代の人にまで威丈なる感化力を存するとハ驚ろくの外なきなり、日蓮宗に信仰を得たものは日蓮にすくなるなり、
      南無妙法蓮華経
○春雨に灯して文す君か元
  水道の水よ花(サクラとツウズ)よ江戸
  ハ如何に
  春の文すみれゆかしくかいてあり
  大津繪を見て長閑さを感じけり
  独り居て嵯峨野を謡ふ落花哉
  学校の授業に身の入る春日哉
  君いかに諸君ハいかに花の春
    五月五日
     キン(菫)舟兄   キ(箕)人
   兄より文玉はりし午後灯し頃までかヽって綴り了んぬ。
 
  【解説】長一らから引き継いだ雄辨會(雄弁会)の第四回雄弁大会を後藤清造の送別会を兼ねて開いたが、盛大というわけにはいかず、取り組み方が悪かった、大失敗と記述し反省の報告をしている。
  「浮世談」として、宮川君と五山君・秋皎と金太・大谷紫好一座・運動会・暴風と火事など岩手のことを伝えている。特に、明治35年5月の「四日沼宮内にての大火事全市街を烏有に帰したる由、いたましき事にして汽車の煙筒よりなりとて大騒動、沼宮内驛長青くなり黒くなりして居る由、みんな辨償する事にすれば四五十万円は下らざるべし」と沼宮内町の大火を伝えている。


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