盛岡タイムス Web News 2011年 11月 4日 (金)

       

■ 〈大震災私記〉41 田村剛一 災害時の危機管理体制は…

 大災害時につきものの一つにデマ情報がある。「中国の大窃盗団の侵入」や空き巣ねらいのうわさもその一つ。でも、こんなうわさを誰が、何のために流すのか。

  盗みのうわさは、すぐに消えたからよかったものの、かの“口裂け女”のように、大流行でもしたら大変なこと。混乱に拍車をかけ、パニック状態を引き起こしていたかもしれない。

  それでも“大窃盗団”や“口裂け女”のたぐいは、笑い話で済まされるが、公的機関がデマ情報に乗せられると、社会秩序を危うくしかねない。表ざたにはならなかったが、パトロール隊を惑わすようなデマ情報もとび交っていたようだ。

  火災が止み、がれき撤去が、道路中心に行われていたとき、海岸がどうなっているか。この目で確かめようと思い、息子と二人で出かけた。

  防潮堤が壊れ、その巨大な一片が、家に寄りかかっている。魚市場の通路にかかるコンクリートのふたが、波で吹きとばされ、大きな穴がぽっかりあいて、海底が見える。落ちたら大変なこと。

  いたるところ、土砂が掘り起こされ、穴ができ水がたまっている。液状化現象が起きたのかと思った。

  想像をはるかに超える津波の破壊力だ。そろそろ家に戻ろうと思い、役場に通ずる道路に出た時、ガァーガァーという無線機の音がした。すぐ後を、無線機を持ったパトロール隊の一人が歩いていた。

  「6b」。雑音の中に、そんな数字を聞いた。

  「津波警報が出たようです。大船渡に6bの津波が押し寄せたようですから、すぐ避難してください」

  周りを見渡したが、パトロール隊以外人影は見えない。津波警報が出たのなら避難しなければならない。しかし、「変だな」と思った。大船渡に押し寄せるまで気がつかなかったのだろうか、案の定、津波は来なかった。大船渡6bはデマ情報だったのだ。

  デマ情報は、これだけではなかった。「自衛隊機が太平洋の沖合いで10bの津波を観測したそうだ」そんなうわさがとんだこともある。

  一体、わが国の危機管理体制はどうなっているのだろうか。こんなことが、もし、防災放送を通じて流れていたら、大変なことになっていただろう。

  地震のたびに津波注意報や津波警報を乱発し、国民を狼少年にしてしまった気象庁。デマ情報が横行するのも、わが国の危機管理体制の未熟から来るとしたら、これほど恐ろしいことはない。
  (山田町)

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