盛岡タイムス Web News 2011年 11月 15日 (火)

       

■ 振袖を無料で貸し出します 被災の新成人に

 
     
  「振袖には伴侶となる人の魂を呼び寄せ、新しい生命を生み出す意味がある」。震災で困難な新成人に振袖の無償貸し出しを呼びかけている松山和年さん  
 
「振袖には伴侶となる人の魂を呼び寄せ、新しい生命を生み出す意味がある」。震災で困難な新成人に振袖の無償貸し出しを呼びかけている松山和年さん
 
  成人式まで残り2カ月。盛岡市みたけの呉服店「きもの織絵屋」は、東日本大震災津波で被災し振袖を用意できない新成人女性に、無償で振袖一式を貸し出す活動を進めている。振袖は顧客に呼びかけて集まったもので、現在40枚が登録されている。代表取締役社長の松山和年さん(56)は「着物に携わる者として振袖の意味を考えると、ぜひ着てほしい。沿岸の人を応援したいと善意で集まった振袖なので、心当たりのある方はお声をかけていただきたい。遠慮なく借りてほしい」と震災で困難な新成人を探している。

   4月5日、同社の久慈店に家を流出した野田村の顧客が海に漬かった着物をビニール袋に入れて来店した。「これは命の次に大事なもの」という言葉に、松山さんは現金だけでなく着物を通じて応援はできないものかと考え始めた。

  同じ頃、大船渡市の綾里小学校に伝わる振袖姿の入学式が洋服姿になったことを知った。「来年の成人式でも振袖を用意できない新成人がいるのでは。用意することが着物を扱う者の使命だ」と決意した。

  顧客との信頼関係で集まった振袖。一式を店がコーディネートし、新成人の体型や希望に沿って提供する。クリーニングは店が負担する。「登録してくださった方は『古いけれど、いい思い出を作ってほしい』とおっしゃっている。ぜひ写真と感想をつけて返してくだされば、貸してくれた方も喜んでくれるはず」と話す。

  松山さんは宮崎県出身。全国チェーンの着物屋に就職し、23歳で岩手に転勤。しかし数字の世界に居心地を悪くし、26歳で仲間5人と独立。伝道人(つたえびと)という立ち回りで、着物文化の伝承を含めて事業を展開してきた。

  着物の精神を大切にしている松山さんだからこそ、綾里小の報道には心を痛めた。振袖には、未婚の女性が袖を振ることによって、伴侶となる人の魂を呼び寄せ、新しい生命を生み出す意味があるという。

  「着物には本来、呪術的な意味合いがある。幸せを引き寄せ、災厄から守ってもらう意味が込められている。そして着物の形は生きる者にとって、最も弱い部分である腹部を七重八重に覆って守ってくれる。体だけでなく心の安定にも優れている」。「長い袖に願いを込めてぜひ着ていただければ」と呼びかけている。

  申し込み・問い合わせは、電話641−0102まで。


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