盛岡タイムス Web News 2011年 11月 29日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉136 及川彩子 菊の花の墓

 
     
   
     
  10月最後の日曜でサマータイムが終わり、日本との時差が8時間になりました。そして11月、イタリア式お彼岸を迎えるのです。

  イタリアの暦には、1日ごとに、聖人フランチェスコ、パオロ、ルチアらの名が記されています。暦に記されていない聖人と殉教者を祀る日が11月1日の「万霊節=諸聖人の日」。そして翌2日が、一般の「死者の日」。学校も職場も2〜3日間の連休で、親戚中が実家に集い、墓参りをするのです。

  アメリカを中心とする「死者の蘇り=ハロウィーン」もこの時期。カボチャのランプ等がにぎやかに街に繰り出しますが、イタリアの万霊節は、墓参りとミサだけの静かな行事です。

  ヨーロッパには、教会の建築物と同様、墓地にも観光名所として知られる所が少なくありません。中でも有名なのがモーツァルトやベートーベンが埋葬されているウィーン中央墓地。

  イタリアには、「屋根のない美術館」とも言われるミラノ市民墓地があります。

  この墓地には、指揮者トスカニーニや作曲家ベルディなど著名人が埋葬されているだけでなく、死への祝福・旅立ちの装束として墓を装飾する彫刻が6千体。キリスト教の「死」に対する信仰を感じさせ、圧巻です。

  私の住むアジアゴ郊外の市民墓地にもモニュメント張りで、さまざまなデザインの彫刻と見間違う墓がたくさんあります〔写真〕。「死者の日」の墓地を埋め尽くすのは、黄金に輝く菊の花で、イタリア人好みの花の一つです。

  オペラ「蝶々夫人」で知られるプッチーニも、イタリア建国の父エマヌエルT世の息子の葬儀のために「菊の花」と名付けた、美
しい弦楽曲を作曲しました。

  連休初日には、町の菓子店に、死者の聖なる食物と言われる空豆型のクッキーが並びます。それを頬張りながら選ぶ花屋の菊の鉢も、バラ等で個性的にアレンジするイタリア人。安息の場の創造、究極のアイデアも、信仰の深さと切り離すことはできないのです。

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