盛岡タイムス Web News 2012年 1月 8日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉照井良平 白鳥の便り

照井良平(花巻市)

 白鳥の便り
 
この
10ケ月あまり
みちのくの日々に
何の便りもくれなかったが
今年もきみたちはやって来ていたね
相変わらずの
真っ白なスタイルで
 
穏やかな
初冬のつつみの
枯れ草の雪スダレ模様が残る瀬で
餌をついばむ
そのゆったりとした一歩の歩みは
確かな一歩の足取りで
生きる安心に満ち
満ち溢れた一歩
 
思えばきみたちが
丁度 渡りに旅発つ頃
突然襲ってきた3・11の大地震
大津波のできごと
がきみたちの故郷のシベリアに
どんな匂いの風となって吹き
伝わっていたのか
そこに住んでいる人々が
どんな情感を抱いていたのか
きみたちのクークー
鳴き交わすことばが分からないから
知る術はないけれど
ナホトカ回りの風にのって
雁行形の絆を互いに守り
ひたすらやってきたその一歩は
旅の疲れも見せず
新鮮な足取りだ
 
冷たい瀬に身をおき
時の 季節の流れに晒されながらも
新鮮な仕草に見えるのは
故郷の水や空をついばんできた
その色艶なのだろうか
あるいは
苦しさを乗り越えてきた旅路の
生きる一歩の光なのだろうか
そんなきみたちの姿を
2012年の息吹の便りとして
ふるさと広田湾
リアス・モンサンミシェル湾の
涯の海に帰った人たちに
ウミネコと米ケ崎で生きる人たちに
羽ばたき伝えたい
 
と振り向き
東の空を見つめるわたしなのだが
白鳥になれない
なれないわたしが羽ばたくだけで
おぼろに浮く初春のリアスに
そよ吹く便り
の思い


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