盛岡タイムス Web News 2012年 1月 15日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉藤野なほ子 朝の鴉

   朝の鴉
  藤野なほ子

 
朝はすっきりと晴れて
凍りついた狭い空には 雲一つない
屋根の上から太陽がおそい眼をあける
 
赤い洋館の屋根
灰色の高いマンションの屋根
色とりどりの屋根は
高く低く形をかえて重なり
陽を浴びてシルエットを造る
 
今日はみえるだろうか
百八十度の視界に眼をこらす
あっ いた いた
向こうの枯枝にとまっていた黒い影が
追いかけるように動き出す
高いアンテナの先には動かない影もある
 
深呼吸十回位
鴉の影がみえない日は寂しい
どんなに寒くても
鴉はどこかにとまっている
すーっと
雪晴れの空を斜めに横切っていく
今朝の餌はみつかったろうか
鴉の世界では既に活動が始まっている
 
隣の黒い屋根の後ろから
すぐ近くの電線にとんできた一羽の鴉が
とまってじっとこっちをみている
“ほっ おはよう”
 
今日も元気をもらった
私も活動を開始しよう
冬の日は短い
鴉はじっと今日を覗きこんでいる


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