盛岡タイムス Web News 2012年 1月 18日 (水)

       

■ 〈大震災私記〉95 田村剛一 交通僻地

 急に盛岡に用事ができた。10時までに行かねばならない。車を運転しない私は、盛岡に出る時は、いつも列車かバス。今回の津波で鉄道は不通になり、頼るのはバスのみ。

  そこで、バスの時刻表を調べた。とたんにびっくり。当然、日帰りのできる用事と思っていたのだが、10時前に着くバスがない。

  山田をたつ一番早いバスが6時28分。宮古着が7時18分。盛岡行きのバスは8時でなければない。8時の宮古発盛岡行きのバスに乗ると盛岡駅に着くのが10時15分。バスの到着時間は、間々遅れることもあるので、10時の用事には間に合わない。盛岡へ10時前に着こうとすると、前泊するか、山田から宮古まで、タクシーをとばすか、誰かに宮古まで送ってもらうしかない。私は前泊して用事を済ますことにした。

  震災前は、山田発盛岡行きの直通バスが3本もあり、一番早いのが山田発で6時少し前。これで盛岡に行くと9時前には着いた。盛岡二高時代、何度かこのバスを利用したことがある。ところが、震災後、山田・盛岡間の直通バスは一本もなくなった。同じように、鉄道も、釜石回りながら直通列車があったが、もちろん、それもなくなった。山田は、ますます交通僻地の色を濃くしている。

  震災前でさえ、山田は東京から時間距離で最も遠い町の一つとして教科書に載っていた。その時の時間距離は5時間30分。恐らく、東京・盛岡間が新幹線で2時間30分。盛岡・山田間を列車で3時間を見て、計5時間30分を計算したのではないか。震災後は、どのように急いでも、待ち合わせ時間を入れたりすると6時間はかかる。こんな町は日本列島、どこにもないのではなかろうか。まさに、交通僻地である。

  そういうと、きまって、「北海道や沖縄は遠いからもっとかかるはずだ」という人が出る。ところがそうでないのだ。例えば、遠いと思われる北海道の維内。空路で直接東京と結ばれ2時間だ。東端の根室も同じ。東京・釧路間2時間、釧路・根室2時間、合わせて4時間である。交通僻地の一つに数えられていた。能登半島も、今は空路1時間で東京と結ばれている。沖縄の宮古島も空路を乗り継いで3時間30分。

  高速交通時代の今、県庁所在地まで3時間を要する町はどこを探してもないのではないか、山田だけでなく、三陸沿岸振興のためにも、交通綱の整備は急務である。沿岸と内陸を結ぶヘリボートの建設を考えてもよい。バス会社にもひとことある。競争相手の鉄道がなくなったからといって、直通バスをなくし、震災を利用して、運賃値上げをするようなまねはしてほしくない。
(山田町)


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