盛岡タイムス Web News 2012年 1月 22日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〜あなたへの手紙〉上斗米隆夫 ひかり

   ひかり
               上斗米隆夫

単身赴任の部屋を片付け
でも また ここに帰って来たくて
いくつかの衣類や食器を
少しだけ わざと散らかし……
 
盛岡に向かう途中
大好きな
真崎海岸に寄り道しようと
遠回りの
海沿いの道を選んだ
 
病は
 
医師たちの言葉から
それとなく察せられ
紹介される病院は
その度にランクが上がり
今度が 三つめだった
 
子どもたちや妻や
やり残した山ほどのことを思ったが
答えなどなにも見つからないまま
真崎に着いた
 
いつもの釣り場でも
遠くばかり見ていて
本当は
獲物などどうでもよかった
 
雲間からのひかりが
海面で跳ね
遠くにはひっそりと入り江が望まれ
細々と続く小道を
漁具を積んだ
白い軽トラが走って行った
 
崖の上の松林は
岬の端まで延々とつづき
初夏の風は
休みなく下りてきて
走りぬけていったが
その感触はなかった
 
 
ここに広がるひかりは
私には見えなかった
初めての
景色ばかりだった

 

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