盛岡タイムス Web News 2012年 3月 4日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉金野清人 白鳥よ

 白鳥よ
       金野清人
 
去年の春
先も見えない岩手の空を
震災の悲しみを背負い
悼みながら去っていった白鳥よ
 
この春は
黒雲の切れた盛岡の空を
安堵の胸を抱いて飛んでいく
 
去年の春
途方にくれる私を置き去りにして
散り散りに飛んでいってしまった白鳥よ
 
この春は
家族の絆を強め
V字を輝かせながら
シベリアの空を目指して羽ばたいていく
 
雪解けの高松池畔にたたずむ私に
立ち上がる希望と勇気を与え
雄々しく飛び立っていく
 
茜色に染まる盛岡の街をあとにして
私の手紙を携え
はるか異国のカザフスタンへ
健気に飛んでいく
 
慈悲深い白鳥よ
カラガンダ強制収容所の跡地に着いたら
供花もない永久凍土の下に眠る父に
きちんと伝えておくれ
 
−叔父さんも叔母さんも
  津波で一切合切流されたが
  みんな命拾いして
  お父さんの実家に身を寄せ
  恙なく暮らしておると−

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