盛岡タイムス Web News 2012年 3月 8日 (木)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉302 八木淳一郎 星座の歳月

  西の空には秋、天頂付近には冬、そして東の空には春と、3つ季節の星座が顔を出しています。こうした星空は地球の自転のために1時間に角度の15度ずつ東から西へと動いていって、西空の星々は山並みの陰に沈み、東の空には新たな星たちが上ってきます。今の時期は、夜半前後がかに座やしし座、おとめ座など春の星座が主役となる時間帯です。
     
  昨年3月11日の夜。明かりの消えた盛岡の市街地の上には、月齢7日の月と、オリオン座が輝いていた  
  昨年3月11日の夜。明かりの消えた盛岡の市街地の上には、月齢7日の月と、オリオン座が輝いていた
 

  自転を繰り返しながら地球は太陽の周りを回ります。公転と呼ばれる動きです。もし地球が1カ所にとどまったままで自転するのであれば、見える星はいつも決まって同じ位置に同じものが見えることになりますが、太陽の周囲を回ることで背景の風景、すなわち星空の様子が1年を通して少しずつ変わっていきます。360度を365日かけて移動することで、毎晩見える星が4分ずつ早く東の空に顔を出すようになっていきます。1カ月後には2時間も早く出てくるようになり、12カ月を経てまた元に戻ります。

  冬の星座とか春の星座といった変化は、こうした地球の自転と公転の組み合わせがもたらす自然の妙といえるかもしれません。ことにも四季の訪れがはっきりしている日本には、星空の移り変わる様がぴったりマッチしているように思われます。

  このように星空は毎年同じ繰り返しで、星座の位置や形も変わりがないように見えますが、これも何千年、何万年とたつうちに少しずつ様相が変わっていきます。一つには地球の歳差運動といって、地軸が2万6千年かけてみそやゴマをすりこぎ棒の動きに似た動きをするのです。北極星はいつか、こと座のベガ(織り姫星)に替わり、逆に数千年前はこぐま座のコカブと呼ばれる星が北極星の役目を果たしていました。やがて南半球でしか見えなかった星座も見える日がやってきます。

  もう一つ、星の固有運動と呼ばれるものがあります。大昔、星座をかたち作る星は永遠に位置が変わらないものと考えられていましたが、それぞれの固有運動によって星座の形が変わっていきます。あの北斗七星の姿も何万年後かには崩れてしまいます。私たちの太陽も、地球など太陽系の仲間を従えながら今も猛スピードである方向に動いています。さらに、私たちの天の川銀河は2億5千万年の周期で回転していて、しかも私たちのいる場所は回転する渦巻きの端の方にありますから、周りの風景はどんどん変わっていくことになります。

  さて、1年前、盛岡の街中から天の川が見えた記憶が思い出されます。平成23年3月11日。大震災によって盛岡は闇と静寂に包まれました。停電で真っ暗になった地上の世界を、天上の無数の星々が照らしていました。明るく華やかなはずの星空が、この夜は悲しみをたたえていました。目をしばたたかせるように星々が瞬き、そのかたわらに普段なら山の中でしか見えない天の川の光の帯が横たわっていました。この夜、大津波に襲われた沿岸の人たちの頭上にも同じ星空があったでしょう。けれどもそれを仰ぎ見るどころではなかったに違いありません。

  どうか今年は、そして来年もまたその後の年も、夜ごと現れる美の使いたちのほほ笑みが照らしかけてくれますよう。
(盛岡天文同好会会員)
 

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