盛岡タイムス Web News 2012年 3月 19日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉63 畠山直哉の石灰写真製造所

 「石灰写真家」との異名で呼ばれ、今や日本から、世界を代表する写真家となった畠山直哉さん(54)が、2011年度の文化庁第62回芸術選奨(美術)で文部科学大臣賞を受賞した。「東京都写真美術館で開催した畠山直哉展で1980年代以来テーマとして撮影してきた、“自然と人間の営みとの関わりあい”を再構築した作品群の集大成。とりわけ、そこで示された新作“陸前高田”と“気仙川”は、そこに生まれ育った氏にとって重い意味を持つ作品であり、注目にあたいする」が贈賞理由。

  筑波大学芸術学群に美術を学び、2年の時に大辻清司教授に写真の魅力について開眼させられ、それまでの絵画から、写真へと転向。大学院・芸術研究修士課程を修了した。学生時代の82年「等高線」という写真集をカメラワークス東京から出版したのが始まりだった。

  彼は学生時代にもよく、僕の店「ジャズ喫茶ジョニー」にやって来た。78年には僕が制作したジャズレコードにジャケット絵を描いてくれ、版画も使わせてもらった。

  96年3月、彼の38歳誕生月に出版された写真集「LIME・WARKS」(石灰工場)は朝日カメラ誌の第22回木村伊兵衛写真賞を受賞。さらに2000年6月出版の「アンダーグラウンド」では毎日新聞社主催の毎日芸術賞を受賞。その受賞式には「見届けて!」と、彼の母と一緒に僕まで招待してくれた。

  今回「おめでとう!」の電話をしたら、その母が3・11の津波で亡くなられたことを知らされ、僕は言葉を失った。東京在住の彼は今、ふるさとの仮設住宅に暮らす人たちの集会所を建てるために奔走しているという。

  「景色や場所をどこかへ置き換える遊びを、小さい時からやっていた」と言う直哉さんは「人間にとって物とは何か」を問いながら「どこでもない、地上でもない、この世じゃない、」写真を撮る人。都市とそれを造った原料との奇妙な関係。ビル群の製造工場と鉱山。ダイナマイトによって石灰石が鳥のように飛ぶ瞬間の「ブラスト」。その鳥となって彼が、巨大墓地の様にも見える都会ビル街を空撮。東京地下の暗闇を流れる川を撮り、真に絵を超えた写真と感じさせられた「アンダーグラウンド」。彼の心の中でそれらの全ては「福伏鉱山」(陸前高田市気仙町)の原風景に戻ってゆく…。
(開運橋のジョニー店主)



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