盛岡タイムス Web News 2012年4月 1日 (日)

       

■ 〈わが歳時記〉 高橋爾郎 4月

 卯月4月。入園、入学、進学、就職、転勤など、希望に胸をふくらませて多くの人たちが出発する。新しい人生門出の月である。新しい大きな帽子にピカピカのランドセルを背負い若い両親と一緒に喜び勇んで学校に向かう一年生を見ると、思わず「入学おめでとう」と声をかけたくなる。わが家でも孫娘が東京の大学に入った。去年は上の男の孫が東京の大学に入った。二人ともアパートを借りてのそれぞれの自炊生活である。妻と息子夫婦の暮らしで寂しくなったが「かわいい子には旅をさせろ」ということわざもある。笑って握手をして見送った。兄妹のアパートが比較的近いのが、じじいのぼくには安心だ。学業ばかりでなく、いろいろ人生の勉強にもなるだろうと思う。
     ※
  4月1日から6月末日までJRの「いわてデスティネーションキャンペーン」が始まった。JRでは県北、県央、県南、沿岸エリアに区分して美しい写真と解説のガイドブックを作成してくれた。例えば「県南エリアガイド」には花巻、北上、金ケ崎、奥州、平泉、一関、遠野、西和賀の名所、旧跡、民俗・伝統行事、体験施設、温泉、四季折々の風光・食物などが丁寧に紹介されている。長い間、岩手に住んでいるが、まだまだ知らぬ所や知りたいことがいっぱいある。

  文芸に関したものもたくさんある。土俗と神秘の魅力をいまにひく「遠野物語」を足で訪れる民話の郷の遠野。宮沢賢治が夢を描き追い求めた理想郷「イーハトーブ」の花巻。孤高の詩人がみずからを見つめ贖罪(しょくざい)の生活をつづけた山口の高村光太郎山荘。日本でただひとつの、われら短詩型文学の拠点、北上の日本現代詩歌文学館などである。ぼくも時間を見つけてじっくりと訪ね、身近な旅の再発見をしたいと思っている。皆さんもぜひお出掛けして頂きたい。
     ※
  さて4日は草木いよいよ清く明るき清明(せいめい)、16日は土用、20日は百穀春雨にうるおう穀雨(こくう)、29日は昭和の日である。今年は昭和で数えると87年になる。中村草田男の俳句ではないけれども、まさに「降る雪や昭和は遠くなりにけり」ではある。海岸では潮干狩りが盛んになる。ぼくの家の回りでも農家の人たちが畑に出始めた。天気の良い日は庭の福寿草がまぶしいまで黄金色の花を開く。岩手の桜は何日頃だろうか。
     ※
  桜ばないのち一ぱい咲くから生命をかけてわが眺めたり
  岡本かの子

 抱かれてこの世に初めて見たる白 花極まりし桜なりしか
  稲葉 京子

 すさまじくひと木の桜ふぶくゆゑ身はひえびえとなりて立ちをり
  岡野 弘彦

 ただ一度生まれ来しなり「さくらさくら」歌ふベラフオンテも我も悲しき
  島田 修二

 ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
  上田三四二

 (歌誌編集者)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします